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2005.09.10

「人生は何事をも為さぬには余りに長いが…」

9月9日(金) 「 -山月記・名人伝-」 19:00~ 於・世田谷パブリックシアター

キャスト/【山月記】野村万作(李徴)、石田幸雄(袁サン←人偏+參) 【名人伝】萬斎(紀昌)、万之介(甘蠅・老紀昌)、石田幸雄(紀昌の妻・飛衛・主人)ほか//敦=萬斎、敦たち=深田博治、高野和憲、月崎晴夫  大鼓/亀井広忠 尺八/藤原道山

  長髪を七三に分け、メガネをかけて、中島敦に扮した萬斎さんのポスターが印象的な「敦」。本日の記事のタイトルは、特に印象的だったフレーズ「人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短い」から。

  中島敦は教科書で読んだ?という朧な記憶のみで、すっかり忘れていたので、角川文庫版を読んで行った(パブリックシアターでは新潮文庫が売られていた)。原作が短くてよかったよ。

 長髪とメガネの敦は1人ではなくて、ほかに3人の敦たちがいて、いわゆる群読のようである。そうこれは「朗読劇」! 「山月記」は、己を恃むあまり虎となった李徴の悲しみが強く胸にせまってくる。万作さんの世界に引きこまれた・・・。二度、鼻の奥がツーンとなったのだが、それは、虎となった自分に驚き「死」を想っていたのに、現れた兎を見たとたん、まさに獣となったシーンと、旧友と別れて月に向かって吼えるシーン。

 休憩後の「名人伝」には、深く重い「山月記」から一転、笑いがいっぱい。音楽にも遊びがあったり。こちらは狂言役者の面目躍如か(もっとも笑いだけが狂言ではないのは当然だが)。萬斎さんの動きや、石田さんの飛衛→妻への「早変わり」など、のっけから笑わせて「山月記」からの転換が鮮やかである。万之介さんの味もいわくいいがたいもので、とても素敵。演出的にも、後ろのスクリーンに漢字を写すなど、工夫が凝らされていた。それは「笑い」のためには効果的なのだけれど、想像力からいけばどうなのか、と思わなくもないが。

 痛いほどに自己を恃みながらも「己はなにものなのか」と叫び続けたような、中島敦の短い人生をも思う。「こころに残る名作」のリストに必ず入っている理由が、少しわかるような気がした。高校生くらいが読むんじゃなくて、もっと後になって、様々な感慨とともに読むとストンと入ってくるようである。この先、「山月記」を読むと、万作さんのお顔(兎のシーン)が浮かびそう。

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