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2005.11.17

ほろ苦いよ、「パートタイマー・秋子」

11月16日(水) 「パートタイマー・秋子」(劇団青年座) 18:30~ 於・本多劇場

Dsc00471 作/永井愛 演出/黒岩亮 キャスト/高畑淳子(秋子)、山本龍二(貫井)、横堀悦夫(恩田店長)、藤夏子(小笠原)、森塚敏(もと八百久)ほか

 画像は公演パンフレットの表紙。チラシも同一の、舞台となるスーパー「フレッシュかねだ」の広告チラシふうデザインである。よく見ると、主役の高畑淳子の写真の横には、「防シワ加工」「有名ブランド」なんて文字も、見える。永井愛の脚本、というだけでなく、このチラシにも誘われてしまった。今回は再演であるが、初演時にもやはり「スーパーのチラシ」を模したものだったようだ(パンフの表4に載っている)。さて物語は、「フレッシュかねだ」の事務所で、パートに採用されたばかりの秋子が、挨拶の練習を繰り返しているシーンから始まる。

 彼女はもともと大手企業の部長夫人で成城に住んでいるのだが、夫の会社が倒産して次の職が見つからないため、やむなく働きに出たようだ。上品でおっとりしていて、要領わるそうなのにいつのまにか「いいトコにいる」、という役どころが、高畑淳子にピッタリ。彼女を採用した改革派(業績が悪いのでなんとか活路を見出すべく)の店長、既得権益を守りたい古参の従業員たち、そして、やはり有名企業の部長だったのにリストラされた男やら、引きこもり経験をもつ若者・・・何も起こらなくても、社会が透けて見えそうな人物模様である。

 そんな人間たちの対立関係だけではなく、いくつもの不正がある。それは肉の消費期限のラベルを貼り替えることだったり、店の商品をくすねることだったり。決して許されないことだと分かっていながら、いつのまにかその感覚を失っていくのには、ある種の「集団心理」のようなものも作用しているのかな。

 と書いていくと、堅苦しいお芝居みたいだけど、勿論そんなことはなくて、いっぱい笑ってしまった。リストラ経験者の貫井が企画した「赤っ恥セール」の時の替え歌などは、その最たるもの。そんな歌やらギャグ的な台詞にアハハと笑ってるんだけど、ふと気がつくと、じんわり怖いというか、苦いものがある。外から見て、いろんな不正を笑い、あるいは指弾するのは簡単だけど、いざ自分がその場にいたら、どうだろうか。周囲の人から浮かないようにとか、生活のためにやめるわけにはいかない、とか・・・理由をつけて自分を納得させ、正義感を麻痺させそう(劇中、秋子は「正義感もパートタイマーだった」と言うのだ)。

 パンフレットの中の扇田昭彦の文章:普通の庶民が抱える悩みと問題をローアングルからこまやかに、しかも喜劇的批判精神をもって生き生きとおもしろく描いてみせる劇作家、という永井愛評はまさに的確だと思った。

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コメント

予想にたがわず、面白く、満足でした。配役の一人ひとりが嵌まっているというのか、俳優さんの力に感心しました。
本多劇場は初めてでしたが、薄汚れた舞台のセットと客席の格差があまりないような・・・といっては失礼ですが、ああいう劇場もいいですね。
ん十年前に下宿していた近辺をぶらついて、帰ってきました。炭屋(?!)が灯油屋になっていたりしたけれど、道筋は変わっていないので、なつかしく・・・
このスーパーの写真で、私がまず目がいったところが切れている!「パートタイマー・秋子」を目立たせるためなんですね、きっと。

投稿: タンゴ | 2005.11.18 14:50

タンゴさま。ほんと主役の高畑さんだけじゃなくて、皆さん適役!でしたね。
このお芝居のことを何も知らないくせにオススメしてしまったけど、
私の目に狂いはなかった、エッヘン。
完成度というか、ふくらみというか・・・「歌わせたい男たち」より印象深いです。

むか~し(笑)、下北沢にお住まいだったのですね。
私はやっと最近、本多劇場に迷わず行けるようになりました。
再開発とかいろいろあるようですが、あのゴチャゴチャ感はいいなぁと(迷うくせに)。
スーパーの写真で切れてるところって・・・? 「お買得品」??

投稿: きびだんご | 2005.11.19 10:30

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