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2006.02.04

「他人の不幸の上に自分だけの幸せは築けません」

2月3日(金) 「クラウディアからの手紙」 19:00~ 於・世田谷パブリックシアター

脚本・演出/鐘下辰男 キャスト/佐々木蔵之介(蜂谷彌三郎)、斉藤由貴(クラウディア)、高橋恵子(久子)、すまけい(吉田)、山西惇(橋本)ほか 振付/井手茂太

 佐々木蔵之介さんと高橋恵子さんという、なかなか魅力的な顔合わせのお芝居なのに、実際に見に行くのには、やや逡巡もあった。鐘下演出はそれほど見ていないけど、なんとなく観念的で息苦しいイメージが残っている上に、題材が「抑留、50年後の帰国、2人の妻」となると、ちょっと躊躇するのも致し方ない。このところ、「アハハ」と気楽に見られればいいや、という方向にどんどん流れている私でもあり・・・。

 でも、結局見に行って、こんな過酷な人生があったのか、という思いと(実話なので)、(どんな境遇でも)生き続けた、その生そのものに、単純に感動したのだった。

 ストーリーは『クラウディア 奇蹟の愛』(村尾靖子著)に依っており、この話自体、テレビで何度か取り上げられているらしい。私は新聞で目にしたことはあったと思うが、それほど強い関心を持たずに来ていた。勿論、原作も読んではいないけれど、まずは戦前からの蜂谷氏(1918年生まれくらい)の人生を、正味2時間45分にまとめた脚本に脱帽である。単に時系列を追っていくのでなはないし、「語り手」が時代背景などを説明したりする、その手法も面白い。そして、要所要所に現れる「不思議なダンス」が、これまた説明を担っていたり、息抜き的な部分だったり、イメージを喚起したり。最初は、な~に?と思っていたのだけれど、だんだんダンス自体を楽しめるようになった(これがダメな人にはつらいかも)。

 佐々木さんは、基本的に「きまじめ」が透けて見えるような役はピッタリと思う。いや~、とてもよかったなぁ。そして、ある意味「静の高橋恵子、動の斉藤由貴」という感じで(実際に動き回ったとかということでなく)、対比という点でも、魅力的だった。

 最後に、蜂谷さんが帰国した時、駅で出迎える妻・久子さんの映像や、ソ連での様子を写した写真がスクリーンに映し出された。見ているこちらも、静かに涙する、という感じ。カーテンコールはなかったけど(すぐに灯りがついた)、この、それぞれの思いを抱えた幕切れにカーテンコールは邪道だろうな、と。

 タイトルは、劇中何度も出てくるクラウデイアの言葉から。日本への帰国を諦めた蜂谷を送り出す、彼女の信念である。

 ところで、私の父も終戦数ヶ月前に応召して満州へ行き、兵隊さんだった日々よりもずっと長く抑留生活を体験している。実は戦争は身近である。この先、平和であるとも限らない。

 

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