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2006.06.03

イラク戦争は遠い遠い出来事

6月3日(土) 「やわらかい服を着て」 13:00~ 於・新国立劇場小劇場

作・演出/永井愛 出演/吉田栄作(一平)、小島聖(新子)、月影瞳(千秋)、山中崇(宙太)、でんでん(城島)ほか

 わーい、永井愛さんの新作! と喜んだのはいいけれど、テーマがイラク戦争、NGOの若者、主演は吉田栄作と知り、一歩も二歩も引いてしまった。でも、永井さんがどんな芝居を作ったのか、やはり見ないわけにはいきますまい。

 全編通して同じ場所=NGO団体「ピース・ウィンカー」の事務所が舞台。時が過ぎていく設定。1幕1場「2003年2月16日(イラク攻撃反対の国際ピースアクションの盛り上がり)」、同2場「2004年4月12日(イラクで3人の日本人が誘拐され、自己責任の名の下、批判の嵐が)」、2幕1場「2005年9月10日(翌日の総選挙で自民圧勝)」、同2場「2006年3月20日(開戦3年め)」。

 Dsc00526湾岸戦争以来、リアルな戦争の映像を居ながらにして目にするようになった。でもかえって、「絵空事」のような感覚に襲われてしまう。だってそこには「想像力」の入り込む余地がなくて、もう結構と背を向けるくらいしかできないんだもの。誘拐にからんでの「自己責任論」の一人歩きに、うそ寒いものを感じつつも、やっぱり「別世界の話」のように感じていた。 そして、たかだか2、3年前の出来事なのに、うんと昔のことのように思えてしまう。距離も時間も、遠い遠い。

 遠いといえば、NGOで活動する人たちも遠い存在である。だけど、この群像劇の中で、彼らの「生活と活動」の葛藤や疑問などなどにも触れることになる。理想論で突っ走るのか、もっと現実と折り合っていくのか。人間関係もいろいろある。衝突が起きる・・・。舞台上では、リーダーが自分で調達した大きな丸テーブルが象徴的なんだけど、最後にそこで、普通に皆がチョコレートの袋詰め作業を始めていく。その、力が抜けた「やわらかさ」が、なんだか身近な存在としての彼らを感じさせてくれ、明るい気持ちになったのだった。

 テーマから言っても、人物が「類型的」になりがちな感は否めないけど、たとえば大家である鉄工所のおやじが、「世の中の大方の意見」を代表して笑わせるし、随所に笑いがあって肩肘張らずに見られた(いや、見る前はそんなイメージ)。登場人物では、わけもわからず入ってきたぶきっちょ無口な青年(山中崇)が、最後には自分で考えて意見を言えた、というあたり、おトクな役ですかね。吉田栄作は初舞台とのことだがそうは思えなかった。でも、彼のイメージとしての格好良さは、前の方で見てるとどうなんだろう。私はほとんど最後列だったので、そこは全く気にならなかったけど。ギター抱えて歌っちゃうしねぇ。

 人質となった3人の命を「3本の蝋燭の火」で象徴したり、12歳で白血病で亡くなったイラクの少女ラナちゃんの名を出すことで、NGOの青年にも見ている我々にも、イラクは確かな現実の問題として、提示されることになる。↑画像はロビーで買ったチョコレート。つまり、劇中に出てきたもので、亡くなる5日前に描いたというラナちゃんの画である(左の女の子が自画像。この画は、チラシ類や幕にも使われている)。

*NGOのキレやすい青年が、ずっと誰かのイメージと重なるなぁと思っていたら、なんと落語家の橘家文左衛門さんであった。終盤に気がついて笑っちゃった。キャップもかぶってたし、声の感じとか。超個人的な(マニアック?)なツボですね~。

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