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2006.10.08

「胎内」から「アジアの女」への試み

10月8日(日) 「アジアの女」 13:00~ 於・新国立劇場小劇場

作・演出/長塚圭史、出演/富田靖子(竹内麻希子)、近藤芳正(竹内晃郎)、菅原永二(村田)、峯村リエ(鳥居)、岩松了(一ノ瀬)

 新国立劇場は行きやすい劇場なので、日曜日にひょこひょこ出かけて行くにはピッタリ・・・なんだけれど、長塚作・演出を日曜の昼下がりに見るってのも、エネルギーが必要かも。そんな、少し及び腰の私である。

 通常の座席表には私のチケ番号はないので、どういうステージが組まれているのかと思ったら、すりばちの底の部分に舞台があって、それを客席が前後にはさむかたち。この形状といい、開演前の黒っぽいぬかるみかと思うようなステージといい、まんま「胎内」(@青山円形劇場)のイメージではないの!? 芝居が始まって照明がつくとずいぶん感じが違ったけど、でも「胎内」を思い出さずにはいられなかった。

 場所は近未来の震災に襲われた東京。ほんとは住んではいけない場所(余震が来るともうダメだとか)に住んでいる兄と妹。出入りしているのは2階の部分で、1階はつぶれている。そこに父親が取り残されてるの? この父親の存在が意味するものが、私には不明なまま。 

 そこに作家と称する一ノ瀬が訪ねてくるのだが、彼の言葉から、兄・晃郎が担当編集者だったこと、一ノ瀬には才能がないこと・・・などがわかってくる。そして、妹・麻希子は過去の失恋から精神を病みリストカットも繰り返したらしい。彼女は、とても植物が育ちそうもない場所なのに種を蒔いて、芽が出るのを待っている。ああ、精神を病んでいる(いた)のは彼女だけではなくて、一ノ瀬は見えない虫の存在を気にし、晃郎はアル中じゃないの?

 兄に「保護」されて、外に出なかった麻希子だけど、「ボランティア」の仕事(! 言外に売春を想像させる)を鳥居に紹介されて、外部と関わり始める。中国人が強盗をしてる、という噂、また「ざじずぜぞ がぎぐげご」をちゃんと発音できるかチェックする、などなど、関東大震災のイメージ?? そして、中国人コミュニティに寄り添い始める麻希子・・・。

 最後に、才能のなかったはずの一ノ瀬が、「麻希子の畑の物語」を紡ぐのが、なかなかいいシーンだと思ったのだが、ここで兄が「アジアの女」と言うのは、なんか強引じゃないのかな。そして、暗転と「余震」を想像させて・・・。このラストも「胎内」的ではあるけれど、なんか観客が置いてかれちゃった感がある。

 パンフレットを見ても、「胎内」を充分意識しているのはわかる。でも、絶望と再生が響いてこないのは、三好十郎の痛切な敗戦体験と違って、作者の震災体験が観念的だから、では。もう少し、考えてみたいけれども。

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コメント

こんにちは。お芝居などなど、秋になっていよいよ盛り上がってますね。
「アジアの女」という言葉、唐突でしたよね。確かに、大震災のイメージも、骨身に沁みる切実な感覚としていまひとつ伝わってこなかったような。関東大震災を喚起するのは、他国人との連帯から「アジア」を引き出すために必要だったのでしょうか。ううむ。加えて最後、麻希子の死(?)の知らせと舞台上の芽吹きも、何となく安易に感じられたりもしたけれど、演出家が同世代のせいなのか、ある種の分かりやすさが自分にとっても分かりやすく、好ましいと思うところもあります。
わたしが観に行った日は、観客が乗り切れなかったのか何なのか、終了時の拍手が中途半端でずっこけてしまったのですが、日曜日はいかがでしたか?

投稿: ポンジュース | 2006.10.09 14:29

日曜日、拍手はパラパラしかありませんでした。
私も小さく3回くらいかなあ。
「あら、これで終わり?」という気がしたもので。
それまで何度も暗転があったし、最後のは揺れてる、と
思ったから、誰かは出てくるのだろうと。
芽吹きが畑だけではなかったので、つい
「ど根性大根」の類を思い浮かべちゃった(^^;)
あ、「桜飛沫」に引き続き、峯村さん、よかったですね。

私にとっては「ワカラン度」のゆえに、引きつけられちゃうのかも。
ところで、「出待ち」らしい若い女性たちが大勢いたのですが、
これって、このお芝居? 長塚さん??

投稿: きびだんご | 2006.10.09 15:15

峯村さん、いいですよね。妹は、いつも友近を思い出してしまい、おかしさ倍増だそうです。

「出待ち」ですか……。わたしが行った日は年配の人が多かったんですよ。このお芝居の出演者に「出待ち」ってほぼあり得ないような気がするのですけれど、長塚さんはわたしが思ってる以上にとっても人気があるのかしら。

投稿: ポンジュース | 2006.10.09 19:53

「出待ち」の人(の多さ)にびっくりぎょうてん。
小劇場じゃなくて、中劇場で何かやってるのかしら、
楽屋口は共通? などなど、ハテナが飛んでしまいました。
ねえ、私も「あり得ない」と思ったんです・・・。

観客は、わりと年齢層が高く、地味系じゃなかったですか。
かと思えば、なかかな個性的なファッションの60代くらいの
女性グループもいたりしましたが。

投稿: きびだんご | 2006.10.10 00:43

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