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2006.11.18

かつての新宿のエネルギーも、空舟に乗せて

11月18日(土) 「現代能楽集Ⅲ『鵺/NUE』」 14:00~ 於・シアタートラム

作・演出/宮沢章夫 出演/上杉祥三(演出家)、若松武史(黒ずくめの男)、中川安奈(桐山雅子)、下総源太郎(俳優)、半田健人(若い俳優)、上村聡(映像作家)、鈴木将一朗(マネージャー)、田中夢(女優)

 鵺とは、トラツグミの異称。と言われても想像できない。ツグミなんて可愛い感じだけども。先日の鎌田東二氏のお話では、京都大学の植物園で鳴き声は聞けるらしい。ただし夜。 平家物語では、「頭が猿、胴体は狸、尾は蛇で手足が虎のケモノで、源頼政に射取られた」とあり、能はその鵺が僧の前に現れ、魂の救済を願って海に沈むのである。さて、それが宮沢章夫作のお芝居となると・・・。

 場所はヨーロッパのどこかの国らしい空港のトランジットルーム。飛行機トラブルで足止めされた演劇関係者の一行が、ここで無為の時間を過ごしている。ヨーロッパ公演を成功させた高名な演出家と、俳優たちには、互いに屈折した感情があって、ギクシャクもしている。そこへ、最初から風景のように存在していた「黒ずくめの男」が加わって・・・。

 正体不明の存在を「鵺」というのなら、まさに「黒ずくめの男」がそうである。どこかで見たことがあるような人? ずっとずっと、このトランジットルームにいるという日本人。

 途中の劇中劇で、清水邦夫の戯曲がいくつか使われている。だんだん明らかになるのは、黒ずくめの男は、かつての新宿で小劇場が熱かった時代のスターだった(が、今は忘れられている)ということ。彼の魂がさまよって、トランジットルームで演出家と出会った、というより、演出家を待ち受けていたのか。「葬送の舟」に二人が向かうところが印象的で、夢幻能の世界を感じた。

 とはいえ、能がよくわからないのと同程度に、よくわかってない私なんだけどね。でも、近しい人を送ったばかりの私には、見たタイミングと相まって忘れられないものとなりそう。

 で、私自身は、鵺が空舟(うつおふね)に乗せられて海中に沈みながら魂の救済を願ったように、弔われているのが新宿が熱狂した時代のようにも思えたのだが。(その頃を知らないから言えるのかな)

 役者さんでは、若い映像作家役の上村聡さんの、不気味な存在感に注目。オタクちゃんをやるととても似合いそうなんだもん。

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コメント

これ、蜷川のことを描いている、と、どこかの劇評で読んだ記憶があります。で、ちょうど同じタイミングで「タンゴ・冬の終わりに」も公演していて、それが蜷川+清水で、って。
蜷川がコレを見てくれないかな、感想が聞きたいな、と書いてあったんですが、そんな感じってありました?

鵺と聞くと、やっぱり(世代的に?)「鵺の鳴く夜は怖ろしい」という横溝映画のCMコピーを思い出してしまいます。でもその映画がなんだったのか、イマイチはっきり思い出せないところが…中年らしくてよいと(爆)

投稿: 猫並 | 2006.11.19 10:10

猫並さま
ありましたよ! 稽古場で役者に手が出るくらい
厳しいってあたりが特に。
ほかにもまあ、そこはかとなくいろいろ。
蜷川だけじゃなくて、「遅筆の作家」の話題も(笑)。
そういう演劇界ネタの部分が面白くもあり不満でもあり。

確かに「鵺」といえば、あの映画ですよね!!
と言いつつ、私も何の映画だったかワカリマセン。
私は怖い映画は苦手なんで、今回の「犬神家」菊之助も
どうしよう、困ったもんだ、と思いつつ。

投稿: きびだんご | 2006.11.19 10:33

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