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2007.11.30

カフカの迷宮にからめ取られ・・・

11月29日(木) 「失踪者(2作品交互上演)」 19:00~ 於・シアタートラム

 交互上演と言っても、3週間余の上演期間の中で、2日間で両方を見るという機会は、そう多くない(会期の後半を中心に4回ある)。どうせなら続けて見たい、と思って昨日今日にしたのだが、疲れるのでは?というのは杞憂で、どっぷりカフカの世界に浸ってしまった。

 それにしても、出演者はほんとにタフ。昨日と全く同じ人たちが、同じカフカの別の芝居をする。しかも1人で10以上の役があったり(一番少ない人で5つだが、殆どが10前後。ただし台詞はないことが多い)、激しい動き(ダンス)があったり。そうそう、「審判」を静とするなら「失踪者」は動である。

 舞台がまた、昨日と全く逆の位置なのも象徴的? つまり、昨日客席だった所に舞台が組まれ、観客は昨日の舞台だったところに設えられた椅子から、普段だと出入り口になる方に向かって座る、というわけ。やはり見下ろすかたちになるのだが、今日は席の傾斜があって見えづらくはない。これは遅刻したらとても入りにくい芝居でもある。早めに仕事が終わっていてよかった!!(一応、用心して足音のしない靴を履いていたのだが、そういう問題ではなく入りにくそう)

 この「失踪者」は、これまでに2回「アメリカ」という題で上演されているが、私は全くの初見。プラハからアメリカに船でやってきた(女中に手をつけたことで、両親がアメリカに追い出した)17歳のカール・ロスマンが主人公である。座っている我々の向かい側、いつもだと観客の出入り口のあるあたりが、冒頭では船のデッキになる。最後の方では列車になるのだが、その使い方が見事。

 カールは途中でうまく入れ替わりながら5人が演じる。到着したときの長身のカールから、伯父の家に世話になるときの、女性(ともさと衣)が演じるカール、など、それぞれの時の彼を象徴しているようである。そして、あたかもフランツ・カフカのような男(笠木誠)が、全編を通じてさりげなく登場している。

 私はこの「失踪者」を見ていて、「迷う」ということにものすごく惹きつけられた。抽象的に迷うのではなくて、文字通り迷うのだ。大きな船の中でも、ポランダー邸でも、ホテルだって迷わずには目指す所へ行けそうもない。いや、カールは抽象的にも迷っているんだろうけれど。そして迷った挙げ句に・・・。「審判」のラストではアウシュビッツをイメージしたが、今日はアジテーションが、より直截的である。

 「審判」「失踪者」は、1年のワープショップを経て作り上げられたものという。こんな風に練り上げられた舞台に出会えたことはとても嬉しい。「失踪者」は休憩込みで3時間40分という長さだけれど、なんだかずーっと見ていてもいい、という気持ちになったほど。そして、この2本を、パブリックシアターの「会員セット券」6000円で見られる、ということに、妙な希望を感じるとともに、もっともっと応援していきたいな、とも思うのである。

Plaha2 ←観劇のお供に、プラハで買ったガーネットの指輪とガラスのイヤリングを。実のところ、私はプラハの市街地を、ぐるぐるぐるぐる迷いながら歩きたい、という欲求のあまり、チェコ語をかじってるんですけどもね。

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