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2008.02.02

「ペルセポリス」:原作を買いに走るゾ

ペルセポリス」(渋谷・シネマライズにて。19:20~の回)

  原作・監督・脚本/マルジャン・サトラビ 共同監督・共同脚本/ヴァンサンパロノー 声の出演/キアラ・マストロヤンニ(マルジ)、カトリーヌ・ドヌーヴ(マルジの母)、ダニエル・ダリュー(マルジの祖母)ほか

 やっぱり、見に行かなくっちゃ、とここで宣言することにはとても意味があった。同好の士(?)からコメントもいただき、矢も楯もたまらずという感じで、ピュンと行ってきた。「カフカ 田舎医者」を振り切って・・・(実は9時半からというのがネックで)。そうしたら、なんと「映画の日」とのことで、1000円と言われて窓口でビックリ。

 原作(グラフィック・ノベル)が日本で出版されたとき、かなり話題にはなっていた。というか、あちこちの書評で目にしていたのではある。で、気にはなっていたものの、購入するところまではいかず、だったのだが、実写版ではなくてアニメで映画化されて日本でも上映! でも実は、映画に関する細かいことは全く知らずにいた。断片的になんとなくキャッチしていた情報のみ。

  いや~、これはモノクロのアニメだからできた世界。黒い背景に白く浮かぶ木々を見たところから、もうすっと映画の中に入って行けた。生身の人間が出てこない分、そしてただ白と黒の強い線で描かれた絵であることで、すっごくニュートラルな感覚で見ることができた気がする。時に小さいマルジを見守っていたり、またマルジの気持ちに共感していたり、あるいは母の立場になっていたり・・・etc.

 主として1970年代末から90年代初めのイランの状況が描かれている、ということになるのだろうか。78年、9歳の主人公マルジの幸せで活発(お転婆でまっすぐ)な日々。王政から革命政権の樹立、さらにイラン・イラク戦争という大きな歴史の流れの中でも、家庭は自由な空気と愛情に満ちている。(パーレビ王朝下で投獄されていた伯父は、いったん解放されたものの、革命政府によって処刑される。しかし、つかの間の自由の間、マルジは多くのことを教えられ、いっぱいの愛情を受けるのだ。きっと伯父にとってはこの子が後に残す希望そのものだったんだろう)

 イランといえば、イスラム教の厳しい戒律とか、革命政権の下での粛清とか、戦乱など、どうしても不自由な暗い生活をイメージしてしまうけど、実際には様々なかたちで「自由」を求め手に入れる。欧米の音楽であったりオシャレであったり。当たり前なのにそんなことは考えもしていない私。描き方もユーモラスで、クスクス笑ってしまう。ああ、キャッチコピーが「ロックとユーモアとちょっぴりの反抗心を胸に」であった。

 突然、スクリーンにゴジラが街を破壊するシーンが出てきてビックリ。おばあちゃんと一緒に見に行った映画! あっ、9歳のマルジは、ブルース・リーが好きだったのでした。絵の中でも、雲とか波形なんかが「大和絵ふう」と言いましょうか(山口晃画伯っぽい)、やっぱり日本はアニメの国?

 上でクスクス笑える場面も、と書いたけれど、涙も流れてしまうのだ。あちらこちらでグスングスン。それは人が死ぬとか、そういう「泣け」の場面ではない。毅然として優しい祖母の言葉や、居場所のないウィーンに疲れ果てて、「帰りたい。での何も聞かないで」と言う娘を、そのまま受け入れる両親の姿。あんな風に広い心で、まっすぐで、ジャスミンの花のにおいがするおばあちゃん。二度目にイランを離れるとき最愛の娘に「帰ってきてはいけない。今のイランにあなたのいる場所はない」と言わざるを得ない母の心。それらの一つ一つが、モノクロの映像とともに強く心に残っている。

 原作本の絵を見たときには、ずっと読み通すには疲れるかも、なんて思ってしまったんだけど、いやいや。早速買いに走らなくては。Persepolis_3 

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コメント

見にいらしたのですね!!! 
モノクロだからこそ、の世界は見る者をその中に引き込みながら、それでいて客観的な目も失わせない、という、実に完成度の高い映画だったと思います。
マルジのおばあちゃんと両親の大きな愛情が胸を打ちますよね。
原作もとてもいいですよ♪

投稿: SwingingFujisan | 2008.02.02 21:49

SwingingFujisanさま
はーい。おかげさまで!! 仕事疲れで寝ちゃったらどうしよう、なんて思ってたけど、杞憂でした。持ってたお茶を飲むことさえ忘れるくらい。
家族の「愛情のあり方」についても、深く考えさせられました。きちんと人を育てる「大人」でありたい、と・・・。
原作、アマゾンに注文しました。サントラ盤もあるんですねぇ。

投稿: きびだんご | 2008.02.02 23:25

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