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2008.03.02

狂言の中の妻たち

3月1日(土) 「狂言ござる乃座 39th」 14:00~ 於・国立能楽堂

内沙汰」萬斎(右近)、石田幸雄(妻) 「因幡堂」万之介(夫)、深田博治(妻)--休憩--素囃子・男舞(大鼓・柿原光博、小鼓・鳥山直也、笛・栗林祐輔)、「塗師平六」萬斎(塗師平六)、万作(師匠)、高野和憲(妻)

 今回のござる乃座は、チラシ(とパンフレットの表紙)からして、W i f e の文字が躍っている。狂言における〈夫婦〉にスポットを当てた番組とあり、ここまではっきりテーマを打ち出すことって・・・今まであったっけ? 私はどれも見たことがないので、とても楽しみ。しかも! 今日の席は正面1列が貰えたのでなおさらウキウキと出かけたのだった。今回は3回公演だったけど、水木は基本的に無理で「土曜しかない!」という状況だったから、ほんとにラッキーだった。

 狂言として一番イメージ通り(=わかりやすい)のは、「因幡堂」。これはもう「怠け者で大酒飲み」の妻、という親しみやすい(えっ、私にとってだけですか?笑)キャラクター。この妻を離縁して薬師如来のお告げ通りに妻を得るが、その被り物をした女が実は・・・。どうにも身勝手で頼りない夫を演じる万之介さんが、最高。特に被り物の女が実は妻、とわかったときのリアクションが傑作だったなぁ。そして、この時の万之介さんにものすごく萬斎さんが似てるのに、今更ながら驚いた。

 最初の「内沙汰」は、大蔵流では「右近左近(うこさこ)」としてよく演じられるものというが、いずれにせよ見たことがない曲である。和泉流では万作さん、萬斎さんくらいしか演じていないとのことなので、見てないのも当然かもしれない。これはもう「台詞術」の狂言、なのかなあ。最初は単にソコツで弱気な夫と、しっかり者の妻、というパターンと思って見ていたのだけれど、それだけじゃない。右近が「モー」と牛の鳴き真似をしたり、なんて牧歌的シーンに騙されちゃイカンね。ちょっとこわいじゃん、この夫婦・・・。

 それに比べると「塗師平六」の夫婦は単純。特に妻の言い分、せっかく越前で塗師としてちゃんとやってるのに、上手な師匠が現れたら夫の仕事がなくなる、という気持ちはわかる。だからといって、夫が死んでしまったことにする、というのが(笑)。しかも、夫の方もそれにのっかって幽霊のフリをするんだから。・・・前半のドタバタお笑いから、そのまま行かずに舞狂言(夢幻能の形式に準じた狂言)ふうな仕立てで、面をつけ謡に合わせて舞う。それでおしまい。オチはついてません!!

 素囃子の3人はみなさん若手のようだけど、すごい迫力があってよかった。これは席が真正面でしかも近かった、というのもあるのかな。耳から頭蓋骨にビシビシ来てしびれました。

 「ござる乃座」は特に番組全体の流れというのに注目しているので、そういう意味でもとても面白かった。アハハだけじゃなくて現代にも通じる夫婦、人のあり方なんてのが後々まで残る感じで。

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コメント

夫婦シリーズ、面白かったですよね。
右近左近は、大蔵流(茂山さん)とはまたちょっと違ったシュールさを感じましたよ。どっちかっていうと、茂山さんのが怖いかも。いかにも都人の騙しあい、元祖仮面夫婦って感じで。江戸前の野村さんは、それでもやっぱりアッサリな(笑)
私は最後の指差しが面白くて、3曲の中ではコレが一番気に入ったかも。
3人の妻の中では、いかにも狂言の妻らしい、わわしい!ってな因幡堂の妻が好きでした。

投稿: 猫並 | 2008.03.02 22:01

猫並さま
茂山家の「右近左近」、一段と見てみたくなりました。そういえば、都の人の「本心はどこにありますのやら」的発言って、怖い感じですもんね。オホホホホーって(笑)。
そう、私ももう1回、「塗師平六」を見てみたいし、共感できる妻(!)は因幡堂のだし わわしい女はよろしおす。

投稿: きびだんご | 2008.03.03 01:26

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