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2008.04.27

狂言で見る「主従」「夫婦」「閻魔さま」

4月25日(金) 「国立能楽堂 4月 狂言の会」 18:30~ 於・国立能楽堂

大蔵流「附子」善竹十郎、大蔵彌太郎、大蔵吉次郎 大蔵流「濯ぎ川(すすぎがわ)」千之丞、千五郎、あきら--休憩--素囃子「早舞」笛・栗林祐輔、小鼓・鳥山直也、大鼓・柿原光博、太鼓・徳田宗久 和泉流「博奕十王」石田幸雄、萬斎、高野和憲、月崎晴夫、竹山悠樹、時田光洋、万之介

 いや~、この演目を知った時、「見たい見たい」」と思い、でも絶対6時半に行けるかどうか怪しいから、中正にしておこう・・・と。思ったのはいいけど、萬斎さん出演だし、競争が激しいということをうっかり忘れていた。気がついたら「中正ってもう最後列しかないっ」で、私にしては珍しく脇正面から見ることに。脇正面って、値段も場所も中途半端と思ってて・・・。(見巧者は脇、なんて言われたって、そんなん私には関係ないし

 幸い、仕事は早めに終わったのでよかった  だって、最初の演目「附子」って今まで見る機会がなかったんだもん。狂言といえば「附子」ということしか知らずに何十年も過ごしてきて、やっと見られたよ~。

 というわけで、脇正面の橋掛かり寄りの席から見た。「附子」のシテ・太郎冠者は善竹十郎さん。善竹さんは、万作家を中心に見てると、大蔵流の中では一番自然に見られる?みたいな感じも。「はんなり度合」の問題かしら。あくまで私の、言語化できない感覚の部分で言ってるだけですが。それはともかく、「附子」って、こんなお話だったのね。私の記憶は子どもの頃にインプットされたままのダイジェスト版。

 この附子って甕に入ってるのに、風上に置いてたらその風に当たっただけでも死んじゃうくらいの猛毒(と主が言うんだもん)。で、太郎冠者、次郎冠者が、風をその甕に向かって扇ぎ送りながら近寄り、紐をほどいて、とととっと戻ってくる、また扇ぎながら近づき蓋を取って逃げ戻る。その動きや台詞が楽しい。舞台ならばこそ。文章だとほんと伝わらないシーンだね。この逃げ帰ってくるのが橋掛かりだから、それはラッキー! その分、大事なお宝を壊す時がやっぱり遠くて、一瞬意識が遠のいてしまった。

 「濯ぎ川」は千五郎家だけが演じている新作狂言。16世紀のフランスの古典小咄を下敷きにして飯沢匡が文学座に書き下ろし、それを狂言化したものとのこと。妻と姑にこきつかわれ小袖を洗濯している男がつぶやくように、妻は「わわしい女」だわ。姑(面をつけ杖をついている)は更に食えないばあさんで(笑)。この同情を禁じ得ない男の姿を、アハハと笑っているうちに、一転、笑ってる場合じゃなくなっちゃう。いや、動きなんかは笑えても心の底が冷え冷え。最後に姑が一人舞台に残って引っ込むまでの姿が、やけに鮮烈に記憶に残っている。

 「博奕十王」は、閻魔大王や鬼たちの衣装や持ち物からして楽しい。あっ、私には閻魔大王といえば、富十郎(@閻魔と政頼)のイメージが。地獄へ来る人間が減ったと嘆くのも同じだもんね。こちらの萬斎・閻魔は、サイコロ博奕で熱くなる、ってのが可愛い! ずっと「一」と言い続けるんだけど、「そろそろ『一』が出るころ」なんてあたり、とても人間っぽい(笑)。

 主従関係、夫婦関係という人間生活の断面、さらに、想像する「あの世」のことまでも笑いに換える。そうして日々のあれやこれやを客観視しているのかもね。そんな大らかさ、豊かさを感じると同時に、あらゆる事象が濃密に関係してたんだろうな、なんてことも思ったのだった。いや~、記憶に残る演目の組み合わせ、演者だったと思う。

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コメント

いやー。国立ならではの構成で、企画の勝利って感じでしたよね。3曲それぞれの味わいを堪能できたというか。

サイコロに「1」がないのはなぜかということと、それは閻魔さんが「1」好きだと知ってたからの仕込みだったのか、それとも偶然なのか、その辺の「必然性」みたいなもんが知りたかったのですが…字幕をつけといたら判ったのかなぁと悶々としました。それだけがココロ残りで(^^ゞ
私は、閻魔さんが「このなりじゃ恥ずかしくて(極楽に)案内できない」とぼやくところに人間性を感じました。閻魔さんは神さんじゃなくて成仏しはぐった人間さんかぁ!と(爆)

投稿: 猫並 | 2008.04.27 09:48

猫並さま
私は今まで国立の「狂言の会」はほとんど見てないのですが(金曜日だから)、こんなに面白い企画が続くならば、頑張って見たいなあと思ってます。最近、金曜日の仕事がちょっと変わって、行きやすくはなったのですよ。
万作家から、というより萬斎さんから入った狂言だけど、いろいろ見てみたくなりました。
字幕、お能じゃないからいいや、と思って私もつけてなかったんですよ。そういえばどんな解説があったんでしょう。今回、3曲とも、小道具あれこれも面白かったです。小袖やサイコロを入れてる袋とかね。

投稿: きびだんご | 2008.04.27 21:39

きゃー、やっぱり行きたかったです(涙)。
チケットはあったのです。が、どうしても外せない仕事が割り込んできて・・・(号泣)。
7時過ぎに仕事は終わったので、タクシー飛ばせば間に合う?なんていう考えも頭を過ったのですが、諦めました・・・。

ざ・ん・ね・ん

投稿: おまさ | 2008.04.28 16:25

おまささま
うっわー。それはあまりにもお気の毒。
私にも覚えがありますけど、時計を見ながら、ああ・・・と思い、それでもまだなんとか、なんて考え、でも仕事に集中しなきゃ、などなど。ねえ
3曲の中では、「濯ぎ川」は茂山家しかやらないもののようなので、どこかでご覧になるチャンスがあれば、と思います。あとは、それよりは見られそうなので。

投稿: きびだんご | 2008.04.28 23:34

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