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2008.07.13

ラストシーンが今もゆらゆら

7月11日(金) 「SISTERS」 19:00~ 於・パルコ劇場

作・演出/長塚圭史 出演/松たか子、鈴木杏、吉田鋼太郎、田中哲司、梅沢昌代、中村まこと

 主演の松たか子も鈴木杏も、そんなに好きじゃない。作・演出者としての長塚圭史は・・・見たいような、いやどうしよう、常に複雑な気持ちになってしまう人。なのに、どうして見に行く気になったのでしょう。自分でもよくわからない。C列中央の、とても見やすい席から。

 先に書いたように、この日は私にとって最悪ともいえる日で、足の痛みをこらえつつ座席に座っていた。事前に調べていたのは公演時間くらいで、予備知識はナシ。始まってからすぐに、私の苦手な部類の話がストレートに来てることに気がついた。つまり心を病んでいる?ような、重い暗い・・・。しかも、もう一つ苦手なのが「暴力」なので、どうやらダブルパンチらしいことに、やがて気づいたのだった。(若干ネタばれあり)

 舞台の上は、とあるホテルの一室。右側にはツインベッド、その上の壁に掛けられた大きな画(赤黒い抽象画)から舞台中央の床にかけての亀裂の筋が、最初から目につく。が、それは登場人物に見えているものではないらしい。左には書斎机と書棚、床にも本が重ねられている。ホテルなのになぜ?

 この同じ空間を2組:新婚の夫婦(松たか子と田中哲司←ビストロのシェフ)、ホテルに10年も住んでいる親子(吉田鋼太郎←児童文学の作家と鈴木杏)、それぞれの部屋として使っている。だから、訳がわからないうちには、あれれ、片方の部屋を訪ねてきてるのかな、なんて思ったり。小さいことでも気が抜けないというか、最初から、なに?なぜ?の連続で、漠然とした空気は重く暗いんだけど、それが何なのかわからないままに進んでいく。

 2組の部屋として空間を共用しているだけではなく、同じ場で、いきなり(のように)ホテル内での過去の出来事が演じられもする。全く油断ならないのである。そうして、??と思いながら見ているうちに、松たか子の過去と、鈴木杏の現在、親からの性的虐待が重なり合う。

 松たか子は声が魅力的だな、と、そういえばいつも思うことなのでした。語ることは神経症っぽくて重いのに、声ゆえにやわらげてくれるような、でも緊張感はあるような、そんな感じ。鈴木杏って、年のわりにオバサンの感があって(ごめんね)、今回もそのイメージは変わらないけど、役からすれば、ただカワイイの二十歳であるはずもなく・・・。松たか子の終盤の長広舌は、時に説明的すぎる気もしたけれど、聞かせた! 「ぞわっ」と来る感じが、言葉だけから伝わってくるのがすごい。

 ふと気づいたら、そのあたりでは舞台の上は一面の水。これも亀裂同様、「なかったもの」として演じ続けられる。その水の「ゆらゆら」が壁や天井に映って不思議な世界。そこに鈴木杏の「赤」と松たか子の「黒」があって・・・。もし、後に思い出すとすればまず第一にこのシーンだろうと思う。そこにちょこっと、冒頭あたり、洗面所いっぱいに干された洗濯物の「白」を加えてもいい。

 こんなに苦手なものが揃ったのに、見終わって嫌な感覚は残らない。長塚さんにはじっくり、こんな作を積み重ねていってほしいな、なんて思ってしまう。(という勝手な期待はきっと裏切られるでしょうが) 朝日新聞に出た劇評のうち、松たか子の結婚に触れた部分が妥当なのかどうかは、疑問だ、と、付け加えておきます。

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コメント

私は、長塚圭史は勝った負けたが順番にくるようなところがあって(^^ゞ、去年も海老蔵のドラクルは×で、大竹しのぶと白石加代子のビューティー・クイーン・オブ・リナーンは○で、今回は順番だと×の番だ…と思ってたんですが(笑)
複雑な構成の割りにわかりやすかったのは、直接的な台詞のせいですかね?それとも役者の技術なのかな。
松たか子はつくづく、高麗屋の娘だなって感じます…ああ、なぜこの澄んだ高音が長男に引き継がれなかったんだろう、残念だっ

道元、今週のあとの方に見ます。
それまで日記は拝見しないでおこう(^^ゞ

投稿: 猫並 | 2008.07.13 21:53

猫並さま
そういえば「ドラクル」も長塚さんでしたね。思い出したくない
まあこれからも、まずは躊躇しつつでも見に行く、という感じになるのかなあ・・・。「ビューティー~」は、そもそも役者に立ち向かえそうになくてパスしたんでした。
松たか子、ほんとに声は武器だな、と思います。兄は来月、コクーンですか。

「道元」、日記を楽しみにまってます。

投稿: きびだんご | 2008.07.13 22:49

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