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2008.07.09

「不条理劇から情理劇へ」

7月8日(火) 「心中天網島」 19:00~ 於・笹塚ファクトリー

原作/近松門左衛門 構成・演出/松本修 監修/石川耕士 出演/山田美佳(小春/さん)、孫高宏(紙屋治兵衛)、山田実紗子(遊女/勘太郎・末/紀伊國屋の下女)、得丸伸二(身すがらの太兵衛/大和屋亭主)ほか

 昨秋、世田谷パブリックシアターで見たカフカ「審判」「失踪者」が、とても刺激的で、演出をした松本修という名前が、強くインプットされた。この公演は、松本修という演出者の名前で見に行った、私にはとても珍しい例。松本氏はMODE主宰者で(1989年設立)、「チェーホフ、ベケット等の海外戯曲を独自のワークショップで再読。再構成して上演」とあるから、カフカもまさにその流れだったわけ。

 会場の笹塚ファクトリーは名前だけは聞いたことがあったが、実際に足を運ぶのは初めて。駅のそばの地下2階でとても便利。前に行ったことがあったなら、劇場を特殊なかたちで使っているとわかったのだろうが、なにぶん初めてだったから、「要するに何もない四角い部屋で上演するんだな」と思っていた。四角い空間の三方の壁に沿って客席を3列ほど作り、残る一方が出入り口と。ほんとにすぐ傍で演じられる。

 特徴的なのは、原作のままの台詞だということ。地の文も台詞に混ぜてあるらしいが。つまりは耳慣れない文語で、しかも結構なスピードなので、意味がわからないところもあるのだけれど(しかも大阪弁だ)、なんとなく雰囲気はわかるし、なにより言葉のリズムが心地よい。

 俳優は総勢10人。それで20近くの役があるから、ほとんどの人が2役(3つの人も)。もう少し大勢出演したのかと思っていた。もちろん知ってる役者さんはいないけど、特に女優の方が魅力的に感じたなぁ、総じて。

 シンプルな空間を最小限の道具で、1幕・河庄の座敷や2幕・紙屋内に仕立てるのも面白い。そして3幕、それまでただの壁かと思っていたのが取り払われると、階段状で(もともとの客席だと思う)、蜆川とそこにかかるいくつもの橋を表している。そこが小春と治兵衛の死に場所となる。

 ラスト、治兵衛が小春の喉を突き、本人は離れたところで首を吊るのだが、役者が消えた瞬間に、死骸を示す巨大な瓢箪形の物がぶらさがりユラユラ揺れている。夜が明けた?と思ったときなぜか現代になっていて、携帯カメラでその現場を撮る人たち・・・ちょっとあっけにとられたけど、より哀れがつのっちゃったな。当事者の純粋な(?)気持ちはともかく、格好のネタとしてひたすら消費されていく。近松の頃も今も、その方法が違っているだけではないのか、と。

 あ、タイトルにしたのは、プログラムにある松本修の文章のタイトル。カフカから近松へ、「不条理」劇と「情理」劇、MODEの新しい展開、という。カフカで引き寄せられた私である。この「情理劇」も新鮮に楽しむことができた。

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