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2009.02.20

「カノッサの屈辱」とヘンリー四世

2月17日(火) 「ピランデッロのヘンリー四世」 19:00~ 於・シアタートラム

作/ルイージ・ピランデッロ 英新訳/トム・ストッパード 翻訳/小宮山智津子 上演台本・演出/白井晃 出演/白井晃(ベルクレディ)、串田和美(ヘンリー四世)、秋山菜津子(マティルダ)、千葉哲也(医者)、長谷部瞳(フリーダ)、中山夢歩(ディ・ノッリ)ほか

 串田和美&白井晃のプロジェクト第3弾。私は1本目の「ヒステリア」は見ておらず、去年「ジャックとその主人」(@吉祥寺シアター)は見たんでした。しかーし、今回の作品についても何も知識はなく、ちょっとグロテスクなチラシの写真に、おびえつつ・・・。

 17日に見に行くことにしたのは、火曜はほぼ遅刻の心配がないことと、ポストトークがあるから。当日発表のポストトーク出演者は、串田&白井に、野村萬斎とあって、ウフフフ。萬斎さんは私の2列前でご観劇でした。シアタートラムは小さいから、チケットを買う時にわざわざ後方のセンターを選んでいたのですワ(なので終演後に佐々木蔵之介さんも目撃)。

 さて、席に着くとチラシ類と一緒に「『ピランデッロのヘンリー四世』をご覧になる前に」というA4の紙が置いてあった(なんか古田新太「リチャード三世」を思い出す)。内容は「カノッサの屈辱について」と「ヘンリー四世をめぐる人々」。はい、私のように、どこの国の人でいつの時代の話かもわかってない人向けですねぇ。神聖ローマ帝国の皇帝ヘンリー四世、1050年生まれ。ふーん。*人名はストッパードの訳に合わせて英語読みなので、ハインリッヒ四世、なんですかねー。

(原作は単に「ヘンリー四世」で、この上演に際して「ピランデッロの」と作者名をつけたとのこと。じゃないとほんとにシェイクスピアかと思っちゃうね。)

 と言っても、お芝居の舞台が11世紀なのでは決してない。20年前の仮装パレードでヘンリー四世に扮していた時に落馬して頭を打ち、それ以来ずっと自分はヘンリー四世だと思って生きている男が主人公。おそらく裕福な貴族の家系ゆえ、別荘で、お芝居をしてくれる人を何人も雇って、毎日「ヘンリー四世ごっこ」をしている、と言えばいいか。本人は真剣に(なんたって自分はヘンリー四世なんだから)、周囲はそれに合わせて。

 そこへ別荘の持ち主の青年(甥)が、精神科の医者と、ヘンリー四世を生きる男の知人の男女、その娘を伴って現れて・・・。と書いていても、ではその時代はいったいいつなのかははっきりわからない。ただいま現在でもあるようだし、もっと前のようでもあり(なんたって、そもそも初演は1922年だとか)。わからないのは、ここに現れる人たちの関係。男女は夫婦かと思っていたらそうでもないみたいだし。うん?

 精神科の医者はもっともらしくあれこれ言うし、若いカップルはジコチューだし、マティルダとベルクレディは夫婦じゃなくて愛人関係みたい、でもうまくいってないのかー。そして彼ら2人が直接、ヘンリー四世になりきってる男とイワクありげだ。

 なーんて思っているうちに、いったい何がホントで何が嘘か、みんなわからなくなってくる。えっ、ヘンリー四世、キミは治ったのか? でも・・・。そのあたりで、ものすごく現代的なテーマをもって、見ている側に迫ってくる。

 何をもって正常といい何をもって異常というのか、とか、虚構を生きる彼のアイデンティティはどこにあるのか、とか。全く今と無関係ない11世紀のカノッサの屈辱をネタにして、この作品が描かれた80年ほど前を見ているようでいて、実は、我々の今を映してる。すごいリアリティ。それは精神を病む人が多くなってる、という実感とも関係してるし、さらに(ポストトークで白井さんが言及されたけど)秋葉原事件の記憶も呼び起こされるようなものとして現れている。

 ところで串田さんはなんとこの役を42年ぶりに演じているのである。ポストトークで萬斎さんが「(串田さんの動きに)観世栄夫さんを思い浮かべた」と仰ったんだけど、その42年前に、観世さんはジョバンニ役だったのだそう(今回は池田さんという松本市芸術文化市民協議会前会長が演じている)。

 演出の白井さんは確か「ぬるぬるっと始まってぬるぬるっと終わ」りたかったと仰ったと思う。だから初日、最後の暗転で拍手がきた時は、ショックだったんだって。この日はちょっとだけ拍手はあったけど、あれ?まだ終わってない?という感じで、よしよし、だったかしらん。

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コメント

う~ん、むずかしそうな芝居だ…ヘンリー4世ごっこまではわかるのだけど…
きびだんご様の説明で、何となく芝居全体の姿が浮かびあがってくるけれど、実際に見ていたら、混乱して、何がなんだかわからなくなりそう。
ところで、白井晃といえば、私には「王様のレストラン」のソムリエ、「カノッサの屈辱」といえばフジのかつての深夜番組…
ああTVに毒されている
萬斎さんと蔵之介さん、うらやまし~い。

投稿: SwingingFujisan | 2009.02.21 00:47

SwingingFujisanさま
えーっと、お芝居を「ちゃんと」説明するのは放棄してます。ごめんなさい でもすごく密度が濃くて、舞台装置もシンプルなんだけどイメージがふくらんで、なかなか気に入ったのですよ。串田-白井が舞台の上である種の対決をしていて、それも見応えありました。・・・っていうのがわかってもらえればヨシってところ。
ポストトークを聞けたのは、すごくよかったです。来週水曜には串田&白井による上演作品レクチャーもあるんですが、それには行けなくて残念。
「カノッサの屈辱」は私もテレビ番組としてだけ記憶してました
あと、シアタートラムはハコの小ささのわりに(というか、だから目立つのか)、演劇関係の方が客席に多いと感じます。私が見に行った時も、後ろの2人は若い役者さんだったようで、ヘンリー四世がらみ(誰よ?という流れ)で、自分が出た芝居の台詞がどーしたこーした、なんて言ってました

投稿: きびだんご | 2009.02.21 09:33

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