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2009.10.30

「思い出のつまった土地を手放す」葛藤について

10月29日(木) 「夏時間の庭」 於・下高井戸シネマ(10:05~)

監督・脚本/オリヴィエ・アサイヤス 出演/ジュリエット・ビノシュ(長女アドリエンヌ)、シャルル・ベルリング(長男フレデリック)、ジェレミー・レニエ(次男ジェレミー)、エディット・スコブ(母エレーヌ)、イザベル・サドワイヤン(家政婦エロイーズ)

 ロードショー公開されていた時に見損ねていたのを、下高井戸でやっと見た。明日(金曜日)までだったんだもん。ここで逃すと、もうずっと見られなかったに違いない。

 オルセー美術館の開館20周年記念作品、ということで、映画の中には有名な絵画や工芸品がいっぱい。これらの美術品を所蔵していた「母」が亡くなり、残された3人の子どもたちに、母が住んでいたパリ郊外の家も含めて「処分」問題が大きくのしかかってくる。 思い出として残したい人、売ってお金を得たい人・・・。それぞれの現実に、どう折り合いをつけるのか。といっても、みんな知的で冷静な人たちだから、そこで混乱が起きるわけではないけれど。

 この母の住む家と広大な庭が、とても素敵。それにも増して、母親役のエディット・スコブにとても惹きつけられた。クールな中にも、老いの現実と、母親としての気持ち(子どもたちを束縛してはいけない)が深く刻まれていて・・・。体格的にも好対照な家政婦エロイーズ(老婦人)は、おおらかで愛に溢れていて、本質の人、という感じ。映画の始まりに登場する母、ラストに登場する家政婦。この2人の存在が、想像以上に大きかったなぁ。

 フランスに住む長男、中国で仕事をしている次男、NY暮らしの長女。それぞれに生活基盤が違う。こんな時、やっぱり長男は大変ね。・・・とか、洋の東西、財産の有無を問わず、根源的な問題が突きつけられていて、ちょっと身につまされるものすらある。見る前には、全然、別世界の話だと思っていたのに、実はそうじゃなかったのだ。我々も、土地の処分(分け方)をめぐっては、10年以上前のことであっても、いまだに「あれでよかったのか」などと思うのだもの。

 相続税対策や、母親の遺志もあって、多くがオルセー美術館に寄贈される。しかし、絵画は別(コレクターが独占するよりも大勢の目に触れたほうがいいのかも)としても、母の家で使われていた棚や花瓶は、美術館の中では「死んでいる」。少なくとも、そう見える、というのは、なかなか皮肉な話ではないかしら。

 そうそう、孫と祖父母、というのも、親子関係とは全く別の次元として、常に存在する。現実の問題にとらわれない分、孫は純粋に「思い」を受け止めるんだろうな、と、これも自分に置き換えてみることができる。

 仕事前に、モーニングでこんな映画との時間が持てたのも嬉しい。けっこうお客さんも入ってたよ(もちろん、ほぼシルバー世代)。

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映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

ロードショウ公開のほぼ最終日に観ました。この手のフランス映画はしみじみ良いですね。好きな映画です。

投稿: クヮン | 2009.10.31 02:08

ぎりぎりでご覧になれてよかった!!
美術品や広大な土地など縁のない私などでも、おっしゃるように根源的な問題を目の前にして身につまされるところが多々ありました。
親子であっても兄弟であっても、それぞれの生活が出来上がってしまえば、現実的に生きていくしかないんですものね。関係が近しいだけに、その距離の広がりは大きく感じられるのかもしれません。でも、絶対心のどこかで痛みを感じている自分たちがいるんだと思います、家族だもの。

投稿: SwingingFujisan | 2009.10.31 08:38

クヮンさま
おおっ、ご覧になってましたか。
ほんとしみじみ良かったですね。
スクリーンの中も、見ている私にも、豊かな時間があったなぁと思いました。

投稿: きびだんご | 2009.10.31 08:58

SwingingFujisanさま
ありがとうございます。おかげで間に合いました。
今後もけっこう気になるラインナップ
確かに血縁関係は一生(いや代々)だけど、それぞれの生活があってほんと身につまされますね。
ずっと元気でピンシャン、なんて思っていた親が、「(子に)迷惑をかけたくない」「申し訳ない」なんて言うようになると、兄弟関係もまた違う段階になるんだなぁ・・・。でも、永遠に兄弟なのよね。
話は違いますが、うちは一人っ子なので、私は「将来は面倒みてよねっ。迷惑かけてやる~」と半ばおどしてるんですが、それは今元気だから言えるだけなんでしょうかねぇ。

投稿: きびだんご | 2009.10.31 09:18

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