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2009.11.20

見てから読むとよくわかる:ヘンリー六世

11月18日(水) 「ヘンリー六世 第3部 薔薇戦争」 14:00~ 於・新国立劇場中劇場

出演/浦井健治(ヘンリー六世)、中嶋朋子(王妃マーガレット)、ソニン(皇太子エドワード)、上杉祥三(ウォリック伯)、岡本健一(リチャード)、今井朋彦(エドワード)ほか

 第3部の席は19列のちょうどセンターあたり。すぐ後ろが音響ブースか何かで私の後ろにはもう席はないから気楽だった。全体がよく見えるし。中劇場ではこのあたりの席を狙えばいいのかも・・・と言っても、そんなに行かないから次には絶対忘れてるね。

 第3部ではヨーク公(渡辺徹)が王妃の軍隊との戦いに敗れて死ぬ。そしてまたその首が・・・。そのあたりから彼の息子たちの、エドワード、ジョージ、リチャードの活躍の場が多くなってくる。
 重臣たちによる権力闘争が印象的な第1部、戦いの中にもロマンスと笑いの場がある第2部、そしてダイナミックな動き(戦いのシーンが群舞のようだったりする)と若い世代に引き継がれた争いの第3部、というところだろうか。

 3部のすべてを見なくても、一つの部で完結はしている、とのことだったけど、やはりこれは全部見たほうがいいと思うな。そういう機会だったのだし。

 浦井ヘンリーは最後まで、素敵な王さま(というより中身は王子さま)だったね、とっても頼りないけど。なんていうのかな、得ようと努力しなくても生まれながらに約束されていた王位だからこそ(しかも生後9ヶ月で即位)、争いが耐えられない優しい人なのよ。

 劇中では、ちょうど「義経千本桜」の義経みたく、タイトルロールだけども周囲の人間がめっちゃ頑張ってて、彼は台風の目の中みたいな穏やかな位置にいる、だけど運命からは逃れられない存在、という気がした。第3部の彼を支配していたのは最早あきらめ。妻と息子は、軟弱な王(だってヘンリーが死んだら王位はヨーク公に、と約束するんだもの)を捨てて、戦うことを選ぶ。

 これで「リチャード三世」に至る道筋がよくわかって、次に「リチャード三世」を見るのが(「ヘンリー六世」よりははるかに上演されるでしょうから)また楽しみになった。第一、この王妃マーガレットがなぜ「リチャード三世」では「呪うためだけに」存在するのかがわかるもん。そして折良く、来月は「国盗人」の再演なのでした!

 第3部では、それまでの部でメインになって活躍した木場勝己、村井国夫、中嶋しゅうといった人たちが、森番だの猟師だのでちょこっと出ていて、それもまた楽しい。ついつい「ご苦労さまでしたねぇ」と言いたくなってしまう。で、そんな役をおもしろく演じるところが不思議な魅力だったりもする。

 舞台の奥行きを生かした装置や演出、上下の動き(天井からいろいろ降りてくる)もあるし、役者以外の魅力も多々感じることができた。こういうお芝居にしては異例ともいえるくらい、稽古期間も長く取れたそうで、新国立劇場ならではのこういう試みは是非とも続けていってほしいものだと思う。

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コメント

学生の頃は歴史をまったく勉強しなかったため、以前は、イギリス人はヘンリーとかエドワードとかジョージなんていう決まった名前を使いまわすから判りにくい(フランス人ならシャルルとかルイ、ドイツ人だとカールだのヨーゼフだの、みんな同じ)と思ってたんですが…
日本人は、時の権力者から字を賜ったりして、しかもなんかあると改名したりもして、もっと判りにくい!ってことが最近ようやくわかってきたところです(爆)

投稿: 猫並 | 2009.11.21 23:50

猫並さま
ヘンリーだのエドワードだの、同じ名前があるいっぽう、でも片仮名の名前は頭に入らん、というのもあって・・・この「ヘンリー六世」の戯曲を読む時にも、難渋しました。サマセット公、サフォーク公?? でも、一度お芝居で見ると顔が浮かぶので、その点はよかったかな、と。
そういえば日本の場合、明治の元勲あたりまで、いつの間にか名前が変わってたんでしたっけ。

投稿: きびだんご | 2009.11.22 22:10

楽しいレポ、ありがとうございました!!
やっぱり私にはこの3部作の観劇はムリだったなとあっさり諦めがつきましたが、どんなお芝居だったのか興味津々だったので、きびだんご様のレポで舞台を想像しながら楽しみました。
ミーハーな私としては、中嶋しゅう、木場勝己、村井国夫のちょこっと出演がツボです。

しかし、当時のヨーロッパって本当に複雑ですよね~。フランス王とイングランド王を兼ねていたりして、しかもそれぞれで呼び名が違うから。おまけに誰が何世っていうのもなかなか覚えられない。お芝居を見れば少しはわかるようになるかしら。来年さいたまで見ますから

投稿: SwingingFujisan | 2009.11.24 11:50

SwingingFujisanさま
さい芸では蜷川さんがどのように料理されるのか、
それもまた、ほんとに楽しみです。

ここに名前を挙げた3人の俳優さんは、
1部、2部で大活躍だったのは勿論ですが、
出演者の中で「声がいい」ベスト3かもしれません。
少なくとも私の好きなタイプの声なんです。
情感が籠もっていて、しかも明瞭な台詞回しだし。
ヘンリー浦井くんの甘い声もいいですけどね。

カタカナ名前は頭に入らない!
と特に敬遠してきたシェイクスピアの歴史物も
ちょっと壁が低くなってきた・・・かなぁ。

投稿: きびだんご | 2009.11.24 20:09

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