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2010.09.29

さて「イリアス」

9月22日(水) 「イリアス」 13:00~ 於・ル テアトル銀座

原作/ホメロス 演出/栗山民也 脚本/木内宏昌 音楽/金子飛鳥 出演/内野聖陽(アキレウス)、池内博之(ヘクトル)、高橋和也(オデュッセウス)、馬渕英俚可(アンドロマケ)、新妻聖子(カサンドラ)、チョウソンハ(パトロクロス)、木場勝己(アガメムノン)、平幹二朗(プリアモス王)ほか

 ちょうど1週間前に見た「イリアス」。この間、頭の中で熟成させてました(←ウソ

 はるかはるか昔、子ども向けの文学全集の「ギリシア神話」がものすごく好きだったんだけど、私の知識はそこから出ていない。所詮「ファンタジー」として読んでただけ。高校世界史の知識だって全て空に返しちゃったし(笑)。なので、えーっギリシアものか、手強そうだな、というのが正直なところだった。それって、カタカナ名前に混乱しそうだとか・・・ああ老化現象におびえてるのかも。

 そんな不安から押し出してくれたのは、もちろん主演の内野さんほか豪華出演陣への期待と、何より音楽の金子飛鳥さんだった。彼女の音楽は、大地とか母性とか・・・をイメージさせるという感じを持っていた(じっさい「MOTHER」というアルバムもありますが)。その上、生演奏というのだから、期待はいや増すというわけ。

 実際に見てみると、ホメロスの原作はどうなのか全く知らないけど(イタリアで9時間の朗読劇として上演されたこともあるそうですが)、すごくわかりやすくて、舞台の展開と役者さんに集中することができた。

 視覚的には、まず登場する5人のコロスの白(でも血で汚れている)、美しき予言者カサンドラの黒、悲しみを湛えているかのようなアンドロマケの青(深い深い色)・・・女性たちの姿が、いつまでも残るものとしてある。戦いの歴史は、男達の歴史でもあるんだけど、たとえば戦利品としてやりとりされたり奴隷となったりする女の存在を、いやでも意識する。ま、ラストに言及されるのは有名な「トロイの木馬」のヘレンでもあるんだけど。

 新妻聖子さんはミュージカルの人というイメージだけど、実は私は「ガマ王子vs.ザリガニ魔人」で見てるんだよね。でも、そっちは忘れてもこのカサンドラは忘れないと思う。憂いを感じさせる声(歌声)が、飛鳥さんの曲にのって・・・冷たいけど柔らかい空気感を醸し出してたような気がする。

 いっぽうではアキレウスのかなりムキムキな肉体とか、ヘクトルとの戦いのシーンとか、剛な部分があって、それと対照的なところを、新妻さん、馬渕さんが担ってた、というのかな。さらに、老獪なアガメムノンや知恵者のオデュッセウスなどの戦略的部分、老王プリアモスの嘆きなど、うーん皆さんがハズレなく適役だったんだな、と思う。

 でも、中ではチョウソンハさんの一直線なパトロクロスが、声を張り上げた時に聞きづらくて閉口(それは「ザ・キャラクター」でも同じ)。2幕で亡霊となった時はとてもよかったのになぁ。そういえば、池内&チョウソンハは、直前の「ザ・キャラクター」ではやはりギリシア神話の世界をやってたんでした。さらに言えば、チョウさんはどうも私にはいつまでたっても「夏の夜の夢」のパックだな。申し訳ないけど。

 そんなこんなで、「イリアス」はぜひまた見たいな、と早くも再演を望むのでありました。家には蜷川「グリークス」DVDも、途中挫折のまま放ってあるんだけど、今の勢いなら見られるかなぁ。

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演劇」カテゴリの記事

コメント

これ、よかったですねー
意外なほど(爆)
やっぱり平幹は凄いなって思いました。再演したら、ぜひ観に行きたいです。

実は、これも比較的舞台に近い席で観たのですが、こちらの俳優の場合はむき出しの腕に浮かぶ玉の汗がそれほど気持ち悪く感じなかったのに、野田秀樹はきつかったです…
年のせいか、距離感のせいか、芝居内容のせいか、それともヒトとなりか(爆)

投稿: 猫並 | 2010.09.29 19:56

猫並さま
そうなんです! 「意外なほど」よかった、というのに同感。
様々に完成度が高かった、という気がします。
平幹二朗!! どうしてあんまり見てこなかったんだろう、と思います。
で、ここでハタと気づきました。12月にオールメールで「アントニーとクレオパトラ」を上演するのは仲代達矢じゃなくて平幹。どうもいつもごっちゃになるー。

「表に出ろいっ!」がかぶりつきというのは、別に羨ましくないんですが(笑)、こちらは、いいなぁ近くで見られて、です。汗もサワヤカに感じそう。

投稿: きびだんご | 2010.09.29 22:03

私が「イリアス」を見てからはもう2週間経つんだぁ(あるいはまだ2週間かぁと言うべきか)となんか感慨を覚えました。
こうしてレポを拝読すると、舞台がああ甦ります。同じメンバーで是非是非早い再演を!!(ただし、パトロクロス--カタカナ名前は覚えづらい。老化か、はは--のキンキン声はちょっと考え直してね、って言いたい。やっぱり、きびだんご様もお耳障りでしたのね)。

投稿: SwingingFujisan | 2010.10.03 12:14

SwingingFujisanさま
音楽の金子飛鳥さんが公式サイト内のブログに東京千秋楽のことなどなど、お書きになってますので、ぜひ読んでみてください。
ほんと、これに関しては同メンバーで早い時期の再演を、ですね!! いや~、そうしたら何回も何回も通っちゃいそうです。チョウくんでいいから、声を張り上げないで、というところかしら
そして「イリアス」に出会ったことで、ギリシア神話の世界を「見る」ことへの壁が、低くなった気がします。

投稿: きびだんご | 2010.10.03 15:12

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