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2011.01.27

古き時代の精神を思う

1月26日(水) 「わが町」 13:00~ 於・新国立劇場

作/ソートン・ワイルダー 翻訳/水谷八也 演出/宮田慶子 音楽・演奏/稲本響 出演/小堺一機、斉藤由貴、相島一之、鷲尾真知子、佐藤正宏、中村倫也、佃井皆美、山本亨ほか

 12時まで青山1丁目にて、シェイクスピアの話を聞く日なので、ちょうどいいやと「わが町」を入れてたんだけど、国立劇場の歌舞伎を見ようかと、何度迷ったことか。でも、初志貫徹したのは、このチケットが中劇場ゆえにわりと高かった上に、売るのも大変そうだったから。ま、折角手に入れたものですし。

 出演者は、ちょっと地味。1階のサイド席および後方には、空席もあった。それでも入ってる方かもしれない。私は「通し券」を電話で取った時に、「最前列があります」と言われたのに、いやいやもうちょっと後ろで、と前から5列めに。センターブロックでまあ見やすかったけど、開演してから席に着く人、多数で、かなり気が散ってしまった(椅子の前が狭くまたセンターブロックがすごく長いので席に着くのに時間がかかる)。こんなことなら最前列にしておけば・・・。

 とにかく舞台左手前方にピアノが1台あるだけの、がらーんとした舞台を見ながら、開演を待つ。

 そこへ、シンプルな白木の正方形のテーブルセットが2組運ばれて、そこがギブズ家(医師。相島・斉藤)、ウェブ家(地元紙の編集長。佐藤・鷲尾)のダイニングテーブルになる。時は1901年、アメリカ・ニューハンプシャー州のグロ^ヴァーズ・コーナーズである。・・・というようなことを、舞台監督の小堺一機が語り始める。そう、彼はこのお話の外側にいて、常時、「説明する」役なのだ。両方の家の庭に植わっている花の名前までも。

 という作りが最初、よくわからなくて、? 
 彼によって、1901年が第1部、続いてその3年後が第2部。休憩があって第3部は1913年(その中で1899年に一瞬戻る)というのもわかった(←最初にまとめて説明されるわけではない)。具体的な年号を語られると、反射的に日本ではこういう時代、と置き換えてしまう。また、馬で荷物を運ぶシーンがあると、車の登場はもうちょっと後か、フォードって1900年代の初めだっけ、なんて思っちゃう(=仕事がらみの記憶。と、第3部ではきっちり「フォード」の名が出てくるのもおかしかった。

 でも、舞台に見えるのは、そのテーブルセットだけで、後の小道具はなーんにもナシ。馬をひくのも新聞配達も、食事を作り食べるのも、すべて、言わばパントマイム。ああ、そのシンプルな舞台後方に、この町の大通りが照明による光の筋で表されていたのが新鮮だったな。

 このギブズ家、ウェッブ家(ともに両親と男女1人ずつの子供)を中心に、この町の日常の断面が切り取られており、そして時代もまた意識せざるをえない。まだ女性の権利は低いが(選挙権はない)、人々は労働をいとわず、きちんと朝ご飯を食べる、普通の丁寧な暮らし。ほんとの日常。・・・しかし、それはまだ多くの人が病気などで命を落とす時代でもある。

 第3部、町の丘の上の墓地。それまではかなり眠かったりしたのに、ここで急激に目が覚めた!! 死者たちの語りが中心になるのだけれど、その手法も面白いし、何よりそこにあるのは激しい悲しみや嘆きの表現などではなくて、静けさとそして時を経た諦めと、静かに深い悲しみ。・・・泣けてしまいました。

 舞台の構造(やたら間口が広い)が、ちょっと合ってない気がする。前半かなりこちらの注意力が散漫になったのはそのせいもあるかも。ピアノの生演奏も効果的だし、それでいて、結婚式やお葬式の賛美歌は伴奏はなく「声」のみだから、より深く届いた気がする。見終わった後からじわじわ来そうなお芝居だった。

 ところでこの同じ「わが町」のチラシが挟み込まれていて、それは3月に俳優座が上演するもの。うーん、どうせならそちらも見るかな。 

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コメント

私はセット券を買う機会を逸していたので、この舞台を見たのは僥倖みたいなもんでした。見なくてもいいかなーって思ってたけど、見逃さなくて良かった!セットになった3つのうちで、なんと!一番気に入りましたもん。
重たいテーマに耐えきれない年齢になったせいかもしれませんが(爆)
私も5列目くらいだったんですが、ずーっと下手よりのピアノの前くらいで、舞台を斜に観てたせいか、近い方のギブズ家に意識がのっかって、遠い方のウェブ家はお隣さん=他人という感じで観てました。贔屓の役者でもなく、感情移入できる役柄でもないのに、役どころに遠近感を感じたのは久しぶりかもしれません。

投稿: 猫並 | 2011.01.28 22:25

猫並さま
いや、私なんかもっと、重たいテーマはダメなお年頃ですよぉ。
それはさておき。ほんと徐々にじわじわ来てます。
役者さんの誰かが突出してるわけでもなくて、むしろ、相島さんや斉藤由貴、山本亨なんか、もっと出番があってもよさそうなのに・・・でも、そういう一人一人が生きていた時代、生活を感じました。
地味だけどいいお芝居に出会えて、よかった

投稿: きびだんご | 2011.01.28 23:13

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