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2011.02.28

大人の芝居を堪能する

2月26日(土) 「加藤健一事務所 コラボレーション」 18:00~ 於・紀伊國屋ホール

作/ロナルド・ハーウッド 訳/小田島恒志・小田島則子 演出/鵜山仁 出演/加藤健一(リヒャルト・シュトラウス)、福井貴一(シュテファン・ツヴァイク)、加藤忍(ロッテ・アルトマン)、塩田朋子(パウリーネ・シュトラウス)、加藤義宗(ハンス・ヒンケル)、河内喜一朗(パウル・アドルフ)

 26日は仕事だから予定を入れてなかったんだけど、それがキャンセルになって、これ幸いとばかりに気になっていた「コラボレーション」へ。 加藤健一事務所の芝居は、チラシを見る度に気にはなるものの、実際に出かけたのは・・・初めてかもしれない。そのあたり定かではないが、近年は全くみてないことは確か。
 そんなわけで席はどこでもあればいいです!だったけど、イープラスの「すぐチケ」でL列1番。端とはいえ、傾斜も適度にあるしのんびり見るにはよかったです。

 この芝居に惹かれたのは、まず作者が「ドレッサー」のハーウッドであること。パンフレット(500円!)には、ハーウッドの近影も載っている。そうか、映画「戦場のピアニスト」(脚本を手がけた)も見なきゃなー。

Collabo ←そして、物語の舞台がこの辺り、ということ。チェコは関係ないんですが(笑)。時は・・・第2次世界大戦の前、ナチス台頭のあたりから、戦後まで。     

 R・シュトラウスって「ツァラトゥストラ・・・」くらいしか知らない、と思ったら、有名なオペラ「ばらの騎士」の作曲家でしたか。日本のためにも(皇紀2600年を祝う)、作曲してるのね。これについては芝居の中でも触れられてる。(しかし、何も知らんな、私)
 1931年、長年、コンビを組んでいたオペラの台本作家・ホーフマンスタールが亡くなり、嘆く彼と明るく励ます妻(元ソプラノ歌手)とのやりとりから舞台は始まる。そして、シュテファン・ツヴァイクと連絡を取り、オペラ「無口な女」の制作=コラボレーションがスタートする。

 が、ツヴァイクはユダヤ人だった。時代は徐々に、難しくなっていき、シュトラウスも息子の妻がユダヤ人であることで、当局から脅迫まがいの仕打ちをうけたりする(飴と笞で名誉職に祭り上げられ、戦後それは問題になったりするよう)。だけど、このころはまだマシだった・・・。シュトラウスには作品の完成、上演に向けての希望が勝っていて、「反ユダヤ」の恐ろしさを実感として受け止められない部分もある。しかし、当事者のツヴァイクは違う。

 名前だけ出てくるヒトラーやゲッベルスの重い存在、実際に行動する宣伝省のヒンケルの言動、そしてロッテが語る町の様子・・・じわじわ恐ろしさがわいてくる。当たり前のことが当たり前にできない、命をかけることにすらなるあの時代。

 休憩なしの2時間。シンプルだけどよく考えられた舞台装置(主たる舞台はシュトラウス宅とツヴァイクのザルツブルグの別荘)、加藤健一、福井貴一をはじめとする役者の演技力、効果的な美しい音楽(ほとんどシュトラウスの曲)。様々に心に響く舞台だった。重苦しいばかりじゃなくて、特にシュトラウスの妻が明るくておもしろくて、でも支える存在で、かくありたい、てなものだわ(爆)。

 ところで、遠くから見ててもカトケンさんて顔がデカイ、と思ってた。で、全く知らないヒンケル役の若者が、スラリ長身でカッコイイの。後から、これが加藤義宗くんで、カトケンさんの息子だと知って、驚いたよ。

 そうそう、コラボレーションという言葉には、ヨーロッパ現代史においてはナチス・ドイツに対する協力者という意味があるという。ヒンケルの語ったちょっとした言葉で、私もロッテを最後まで疑っちゃってたなぁ、とか(まんまと術中にはまってらぁ)、それも含めて、ハーウッドの作にはこれからも気をつけていきたい。ちなみに、ナチス政権下でのフルトヴェングラーの苦悩を描いた作品もあるという。

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コメント

きびだんごさま

はじめまして、よこ奴と申します。S.F.さまのブログから、きびだんごさまのブログを拝読するようになり、初めてコメントさせていただきます。カトケンさんのこのお芝居は、うっかり見逃してしまい「あちゃ~、ぬかった!」でした。

ナチス政権下でのフルトヴェングラーの苦悩のお芝居も、実現したら是非観たいです!!今年はミシマダブルの「わが友ヒットラー」三谷芝居の「国民の映画」と、なぜかナチスものが続きますね。木場さんのファンで、「わが友...」に行きましたが、もうひとつの「サド侯爵夫人」と共に、平幹二朗さんのすさまじい存在感に圧倒されました!!
あさっては野田芝居の「南へ」に参ります。脚本を今日読み終えましたが、このテーマをどう舞台にされるのか、今からドキドキします

これからも、きびだんごさまの観劇コメント、楽しみにしております。
今後ともよろしくお願いします。

投稿: よこ奴 | 2011.03.03 23:22

よこ奴さま
こんばんは。ようこそ!! お名前はかねがね、でしたのよ。
S.F.さま(←超時空の人みたい)のおかげで、お喋りする仲間が増えて嬉しいです。
カトケンさんのお芝居、ほんと見逃してしまいがちで、もっと気をつけようと心に誓いました。今回、たまたま見ることができたのはラッキー。再演されたらば、是非ご覧になって下さい。フルトヴェングラーの方は「テーキング・サイズ」というタイトルで ロンドンでは「コラボレーション」と2本立てで上演されたそうですから、こちらも期待できる気がします。
「南へ」・・・私はとりあえず予備知識ナシで行ったので、心地よく(?)打ちのめされました。楽の近くにもう一度見るんですが、それまでには戯曲を読んでおくつもりです(野田地図の芝居はたいていそんな風に見ています)。よこ奴さまのご感想を楽しみにしています。
こちらこそ、これからもどうぞよろしくお願いします。

投稿: きびだんご | 2011.03.04 01:07

よこ奴です、ご迷惑顧みず、またまた長いコメントすみません!!
先日は笑顔で扉を開けてくださって、ありがとうございました。「南へ」に行ってきました。いやあほんとに、きびだんごさま同様「こうきたかあ!」という感じでした。戯曲は読んで行きましたが、それが舞台になると「ほおっ!」と思わず声を上げることが何度も!!野田作品は「夢の遊民社」時代はほとんど観ていなかったのですが、ここ10年くらいとても魅力を感じます。舞台作りのセンスが抜群だし、何というか、演劇で実現できる世界が無限に広がり、演劇人として現代日本の最高峰という感じがします。時にはちょっと空回りを感じる作品もありますが、志の高さと自ら出るエネルギーは、類がないように思えます。

今回の舞台も、このテーマを芝居でどれだけの人が扱えるでしょう。笑わせながらも、ドスンと直球を投げてくる。舞台はあふれるエネルギーの中にどこか透明感があり、かつ残酷。夢と幻、時代を行き来しながらも、不思議なリアリティがあって、今の自分が問われる。数年前の「オイル」のときには、あまり涙もろくない私が、終演後ぼろぼろ涙をこぼして立てませんでした。そういえば、あの「The Bee」が来年再演されるそうです!!「南へ」の藤木孝さん怪演!?でしたね。チョウソンハさん、声と動きが魅力的でした。野田さん、前半「表に出ろいっ!」の奥様が重なりませんでしたか?(笑)

ところで、きびだんごさまは、「パラドックス定数」のお芝居をご覧になったことはありますか?あの独特な緊迫感と密度の濃い日本語の応酬、こちらの体力がないとかなり疲れますが、今月、二人芝居で、2作品の連続上演が企画されているようです。好き嫌いはあるかもしれませんが、たまにはこういうのもおもしろいかも、です

投稿: よこ奴 | 2011.03.06 00:55

よこ奴さま
早速、ありがとうございます!!
私はなんのかんの理由をつけて、「南へ」はほとんど感想が書けてないので、演出家の直球に観客として向き合わなきゃなぁ、と改めて思った次第です。
私も野田秀樹はせいぜいここ10年ほどしか見ていません。同世代人間ですが「遅れてきた野田ファン」を自認しとります。というか、なんだかんだで、こんなふうにお芝居にうつつをぬかす(笑)生活ができるようになったのが、その頃から、ってことで。
だから、昔のことは何も知らないけれども、「今」に対する彼の思いや表現に、今の年齢で付き合っていきたいな、と思っています。見るたびに、背中をどやしつけられてるような感覚、ですかしら。さまざま、見ないで(考えないで)すませてきたことを、突きつけられます。そう、「志の高さ」があるから、なんですね。
チョウソウンハくんは、哲学青年っぽいのが新たな魅力でした(「ザ・キャラクター」ではちょっと・・・だったので)。

ところで「パラドックス定数」!・・・見てないと思っていたのに、今、ちょっと探したら三鷹で太宰モチーフのを見てました。「太宰」というテーマがあるので、またちょっと違ったかもしれませんが。そうですか、気にしてみますワ。というか、やっぱり三鷹は侮れん、などと思ったりもしました。このところご無沙汰なのですが、せっかく近くでいい企画をしてるんだし、また行かなくっちゃ。あ、話がそれてしまいましたが、緊迫感とか密度の高さをガツンとくらってみたいです。

投稿: きびだんご | 2011.03.06 10:33

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