« 劇団☆新感線はA席で見る | トップページ | 「ぴあ落語」は草月ホールで »

2011.05.14

「鳥瞰図」に思う、震災後の演劇

5月13日(金) 「鳥瞰図」 19:00~ 於・新国立劇場 小劇場

作/早船聡 演出/松本祐子 出演/渡辺美佐子(佐和子)、入江雅人(茂雄) 野村祐香(ミオ)、八十田勇一(杉田)、弘中麻紀(朝子)、浅野雅博(照之)、佐藤銀平(勇太)、品川徹(峰島)

 再演だけれども、私は初見。以後の「雨」「おどくみ」と一緒に3作通し割引で買ったもの。初演時に見逃したことと、渡辺美佐子も見たかった、というところで。

 船宿が舞台らしい、ということはわかってたんだけど、それは東京湾で浦安で。まさに現実に、たいへんな被害を受けた地である(知人にも、家に住めなくなった人がいる)。そういう時期に、ある意味、牧歌的な日常風景の芝居をするというのも、ストレスになりそうだなぁ。

 船宿を営む親子(渡辺、入江)とアルバイトの若者・勇太。そこへ集う、営業マン、姉弟、元漁師の老人。ご近所が集まる賑やかな場所といったところ。この家には若くして家を出て行った娘(茂雄の姉)がおり、彼女が事故死した後その娘・ミオが訪ねてくる。

 誰もが欠落をかかえながら日々を生きている。たとえば、家庭内の不和であったり、これでいいのかという若者の思いであったり、豊かだった海の記憶だったり・・・。それが、会話の中でだんだんわかってくる。わかってはくるけれど、だからどうする、ということではなくて、たんたんと一日一日がすぎていく。

 けれども、その日々の中にこそ、これからがあるんじゃないかな、と思えてくる。結局、そんなふうにして大きく間違わずに進んでいく・・・。鳥の目、虫の目というように、ある船宿から見える人々の風景を描きながら、それはすごく一般的でありつつ、一人一人に思い当たるところもある感じ。派手さはないけど、底力を感じさせる舞台といったらいいのかな。

 多分に、船宿の親子が「人を信じる」ことができる人、だからかもしれない。見てる方も、なんだか知らないけど何かを信じてみたくなるような・・・。

 以上、あんまりストーリーには則さずに、見終わってのイメージを書いてみた。しかし、埋め立て反対を最後まで訴えていた元漁師の峰島が、「起こってしまったことは、もう取り返しがつかない」という台詞。もちろん、埋め立てられ、鳥も来なくなった、かつての海への言葉だけれど、3・11後の今これを聞くと、突然、現実に引き戻されてしまう。

 これは顕著な例だったわけだけれど、今後も舞台のさまざまな場面で、そういう「元には戻れない」今を自覚するのだと思う。

|

« 劇団☆新感線はA席で見る | トップページ | 「ぴあ落語」は草月ホールで »

演劇」カテゴリの記事

コメント

どちらかというと、どこにも帰結しないような意味のない会話が良かったなぁと印象に残ってます。実はスイカは苦手なんだけど、勧められた時にどうしても断れない。でも誰かが聞いてくれたら正直に答えられる、みたいな。
「戻らない」を大きくして「豊かな自然は帰ってこない」といい、現在を全否定して昔は良かった的主張を展開するような芝居になるのかと途中でちょっと心配になったんですけど(そういうの嫌いなので)、力技で訴えてくるようなところがなく最後まで鳥瞰だったので、ついでだったけど3枚セットを買って良かった!と思いました(笑)

投稿: 猫並 | 2011.05.15 11:18

猫並さま
私も正直言うと、「ついでに」これを見たようなもんですが・・・見てよかったです!! 声高に何かを主張してるわけでもないし、こうしてストーリーを書こうと思っても、さて、ではあるけれども(鳥瞰ってそういうこと?)、「そうだよね」という思いがあふれてくるような。
息子役の入江さんは、今回の参加メンバーみたいですが、彼がよかったなぁ。あと、じいちゃん好きのわたしには峰岸・品川徹さんもね

投稿: きびだんご | 2011.05.15 23:39

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 劇団☆新感線はA席で見る | トップページ | 「ぴあ落語」は草月ホールで »