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2011.05.23

震災後の劇場を思う:たいこどんどん

5月22日(日) 「たいこどんどん」 13:30~ 於・シアターコクーン

作/井上ひさし 演出/蜷川幸雄 出演/中村橋之助、古田新太、鈴木京香、宮本裕子、六平直政、磋川哲朗ほか

 なんだか3月以来、コクーンへは日曜日マチネに行ってるという巡り合わせ。さすがに開演時間は間違わないゾ。今日は一緒に行った「舞台の古田」ファンが、日曜しかダメなのに付き合ったのでした。Bunkamuraチケットセンターで取った席はM列のほぼ中央。すんごく久しぶりにこのあたりから見たけど、全体が見通せるし、なかなか見やすくてよかったと思う。←別に至近距離で見たい人もいないし(爆)。

 何年か前に、「NINAGAWA 十二夜」の演出をした時に、歌舞伎の国へ留学をするつもりで、と蜷川さんは仰ったように記憶している。 そしてあれ以来、蜷川さんのお芝居で、歌舞伎的手法が様々に使われるようになり・・・今回さらに細かくあれやこれや、という感じ。もっとも、「たいこどんどん」の舞台が幕末の江戸~東北だから、その手法には無理がない。

 そして、音楽(伊藤ヨタロウ)や美術などにも、震災のゆえに、という部分を感じるのだけれど。・・・なんたって、いきなりアメージング・グレースだしね。見終わって、つくづく、こんなに暢気にしていても、決して3・11以前には戻れない、という「観客の位置」も再認識したのだった。そしてあの3月に見たのがやはり井上ひさし「日本人のへそ」だったということも。

 さて、この「たいこどんどん」は井上ひさしの初期作品とのこと。品川薬種問屋「いわしや」の若旦那(橋之助)と幇間(古田)が、品川沖を漂流して救われ、釜石へ。そこから二人の道中、東北をあちらこちら。途中、若旦那に売られて鉱山に3年暮らして、逃げ出したり。←なのに若旦那は江戸には戻ってないし。再び出会って、また艱難辛苦があり、やっと江戸に戻ってきた時には・・・。

 この若旦那・幇間のコンビがいい! だって、橋之助の頼りない若旦那って、いかにも、という感じじゃない? とっても自然なのだ。そしてもちろん古田。膨大な台詞を軽やかにこなして、すごい存在感。橋之助は勘三郎が病気休養しているために出演したのだと思うけど、じゃあ、この若旦那は勘三郎の役だったの?(幇間っぽいけど) 
 冒頭にまず古田、そして他のキャストも勢揃いして日本橋・越後屋の前で歌って、橋之助の登場! あいかわらず引き込まれる初めの3分(だったか5分だったか)、蜷川演出。

 そこからめまぐるしく舞台(基本、鏡使用)は変わり、二人以外のキャストは役も様々に変わり・・・東北の旅が続く。古田でもあり、猥雑さも含めて、どうしても「薮原検校」を思い出すけど、たいこの持ってる明るさが楽しいなぁと思う。途中から、すんごいデジャヴがあって(幇間が富本を語ったり、そこで三味線の若旦那に出会ったりの前あたりから)、私はかつて何を見たのかしらん・・・薮原検校が多少よみがえってきた??

 舞台の鈴木京香は初めて見ると思うけど、意外に普通というか、綺麗&東北弁担当、ってところかな。もう少し存在感があるかと思っていた。どの役も同じ感じなんだもーん(そういう役ではありますが)。あと、蜷川舞台での「異形の人」は、今回は拒食症ですか、の女性。以前にも(「道元の月」のバスガイドで)見ているようだけど、今回、あえてその細い肩や足をさらしているので、さすがにギョッとする。だから後からどんな衣裳で出てきても、・・・と思ってしまう。そういうふうにとらわれちゃうことが、狙い通りなんだろうか。

 そして、ストーリーとして「東北」ということはわかっていたけど、ラスト、9年後に戻ってきた江戸ではなくて東京(とうけい)が、また新たな始まり。・・・ああ、なぜそこに波の絵が。なぜ人々が・・・と、否が応でも「今」と向き合いつつ、幕となる。今回は初めの3分よりもさらに終わりの3分にキュンだったようだ。

 プログラムを買っていないので、蜷川さん(をはじめキャストたち)が何を語っているかは知らないけれど、様々なかたちで、つくる側も見る側も、3・11後を生きていくんだな、と拍手をしながら思ったのだった。何か行動をしなければ、と思いつつも、とりあえずは少しずつ募金することくらいしかない無力さを抱えてるんだけど、折りにふれて「寄り添う気持ち」は忘れずにいようと思う。その気持ちを長くずっと持っていれば、どこかで「できること」にも巡り合うだろう。

 *「いわしや」という名称に、確か御茶ノ水か本郷あたりでそんな名前の医療機器会社を見た気がするなぁ、と。薬系の由緒正しい名前なの?
 *M列センターゆえに、綾瀬はるか&中谷美紀(一緒に行動してた)を見たけど、私一人だと名前まではわからなかったでしょう。今回、得意分野(笑)の「おじいさん」は発見できず。
 *ここに至って、井上ひさしの戯曲集を読みたくなってしまった。

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コメント

たいこどんどん、私とは相性が悪いお芝居だったみたいで・・
女性の胸を露出させたり(実は肉襦袢だったらしいですが)病気なのではと思う程に極端に痩せている女性を半裸同然の姿にしたりという演出が不快でしたし、下ネタ満載+女性を性的な対象としか見ていない言動で不快指数がどんどん上がってしまい、カーテンコールでも儀礼的にちょっとだけ拍手をして、すぐに出てしまいました。
あ~あ、お芝居は楽しんだ者勝ちなのに、全然楽しめなかったのは本当に残念!

投稿: 尚花 | 2011.05.23 23:09

尚花さま
それは・・・残念でした お気持ちはよくわかりますよ。私はここ何年かで、かなり鍛えられた気はしてますもん。
でも、井上ひさし+蜷川幸雄に、尚花さんが書かれているような「危惧」を感じていたのも事実で、身構えてただけ大丈夫だったのかもしれません。
(蜷川「新・近松心中物語」=しのぶちゃん出演作の冒頭で、やっぱり胸を露出した女性とか相当にギョッとするシーンがあって、けっこうトラウマになってます)

舞台で感じたは、やっぱり舞台で取り返さなくっちゃね また、素晴らしい舞台のお話を待ってます。

投稿: きびだんご | 2011.05.23 23:44

9年後の江戸――この時期でもあり、象徴的でした。
あの若旦那は橋之助さんにぴったりでしたね。勘三郎さんの若旦那も想像できますが、ほんと2人太鼓になっちゃいそう

私は胸を出した女性よりも拒食症女性のほうがずっとショックでした(猥雑さは薮原検校で免疫ができたみたい)。

蜷川さんの歌舞伎留学の収穫は大きかったようですね。歌舞伎ファンとしては思わずニヤリとしたり嬉しい舞台でした。

投稿: SwingingFujisan | 2011.05.26 00:43

SwingingFujisanさま
さすが蜷川、という感じの、視覚的にも手法的にも、とても印象に残る舞台でしたねー。でもやっぱり古田だ
橋之助さんの若旦那は、たぶん勘三郎さんがやるのよりスッキリしてるというか、あざとさがない(別にけなしてるんじゃないけど)のだと思います。「2人たいこ」とは言い得て妙
ほんと、拒食症?の女性にはギョッとさせられましたよね。(超リアルに考えたら←無意味なことだけど、あんな細くちゃ船で生きていけないわけだし。)そういうある種、異形の人から「目をそむけさせないぞ」ということだけは感じましたが・・・でも。

たまたま大震災が起きた後の上演となり、だからこその演出に様々な思いも重なって、忘れられない舞台となりました。

投稿: きびだんご | 2011.05.26 09:55

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