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2011.07.16

お芝居が「現実を忘れさせる」数時間だとしたら

7月16日(土) 「リタルダンド」 12:30~ 於・パルコ劇場

原案・演出・作詞/G2 脚本/中島淳彦 音楽/荻野清子 出演/吉田鋼太郎(笹岡潤治)、一路真輝(笹岡洋子)、松下洸平(笹岡恵治)、高橋由美子(吉野康子)、伊礼彼方(藤原雅彦)、山崎一(小松義男)、市川しんぺー(泉拓郎)

 G2で、吉田鋼太郎で、パルコ劇場で・・・というと、「ガマ王子~」が印象に残っていて、それに限らず、シェイクスピアではないお芝居の、頼りなかったりコミカルだったりの吉田さんも魅力的。ではあるけれども、「リタルダンド」では、若年性アルツハイマーにかかった役らしい。

 そういうのって、ちょっと引いてしまう部分がある。テレビでもなんでも、(不治の)病気ものはすっごく苦手だし。キャストは魅力的なのに、ちょっとためらうものがあるのは、そんなところだったかもしれない。なんか、劇場では、日常と違う世界で、夢を見たいじゃない? 極端に言えば。私の年齢で「若年性アルツハイマー」なんて、ぜんぜんシャレにならないし。

 と、思いつつ、見にいくところが、少しは成長したのか、やけっぱちなのか(いい方に解釈しようね)。

 さて、主人公の笹岡は音楽雑誌「リタルダンド」の編集長(51歳)。妻を事故で亡くし、半年前に洋子と再婚したばかり。一人息子の恵治は、父の再婚に反発して、家を出ている。そんな笹岡家のリビングダイニング(とベランダ)で、物事は進行する。雑誌なんかが雑然と積んであったりする「生活感」が、ちょっとリアル。

 音楽劇だから、生のピアノが入って、それは下手に置かれている。「国民の映画」とはちがい、荻野さんはずっとピアノの前で、客席に背中を向けている。最初は気がつかなかったけど、笹岡の頭がモヤモヤっとなった時に必ず、ピアノの音が鳴ってた。そういうテーマ曲であるかのように。

 「リタルダンド」特別編集号の、編集会議が笹岡宅で開かれるシーンから始まるのだけれど、そこですでに笹岡には、様々な徴候が。約束を忘れていたり、簡単な地図が読めなかったり、同じ本を何冊も買っていたり・・・。編集部の2人(高橋&伊礼)のノリがよくて、そういう、あれれ?なところも重くはならない。いわゆるイケメンの伊礼くんが、三枚目の役(アツい、昭和の感覚を持つ男なのだ!)で、おおっ、という感じ。

 大事な大事な取材をすっぽかしてしまって、ついには病院に行くことを決意する笹岡。妻の母はアルツハイマーが進んで、施設に入る、という段階で、独り者の兄(山崎一)がいろいろ世話をしてるんだけど、そんな笹岡家のゴタゴタに直面し、妹に離婚するようにと言う、

 きほん、いい人ばかりの中で、この兄は病気の現実(行く末)を知っているがゆえに、また妹が可愛いがゆえに、笹岡には批判的。そしてもう一人、笹岡の後輩で音楽評論家の泉(市川しんぺー)は、なんでもズバズバ言っちゃうし露悪家的なところもあって、空気を掻き乱す存在。

 だけれども、妻は、一緒に生きる道を選ぶんだなぁ・・・。意外と、というくらい、一路さんが自然だった。それって宝塚出身の人への偏見? こういう「家庭内の話」だから、どうなんだろ、と思ってたのを見事に裏切られた。時折入る歌も、もちろん歌い上げるというのではなくて、シンプルに聞かせるのですワ。伊礼くんや、松下くんとのデュエットもよかった。だけど、前の妻の名前で呼ばれるのは、可哀想すぎるよね。いくらそういう病気であっても。(古い記憶の方が、より鮮明だから・・・)。

 ラストのエピソードが、まだ希望かな。現実はもっともっと過酷としても、たぶんどこかに希望がなくては・・・。

 面白かったとか感動したとか、軽々に言えない気分でもある。きっと演じている人たちにも、身近にアルツハイマーの人はいるだろうし、毎回2時間半、重い部分があるかもしれない。お芝居で楽しい夢を見たわけじゃない。だけど、現実を濃縮して旅しながら、希望とかエネルギーがわいてくるなら、幸せな時間とも言えるだろうか。

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コメント

きびだんごさま
ステキなご感想、興味深く読ませていただきました。
「お芝居で楽しい夢を見たわけじゃない」と、いう
ところでハッとしました。
そうだ、私ってば、喜劇であれ非劇であれ、舞台には
非現実の夢を求めているのかもしれないと。
この舞台は確かに夢を見させてくれるお芝居では
なかったです。暗澹とした気持になるというか・・・。
それでも最後のシーンで、舞台の上に生きている人たち
とともに光を感じられたのは救いでした。

一路真輝さん。私、宝塚のサヨナラ公演以来だったの
ですが、当たり前だけどとても自然な女優さんぶりに
驚くやらうれしいやら(笑)。

投稿: スキップ | 2011.08.15 12:27

スキップさま
大阪でご覧になったスキップさまがレポしてくださるおかげで、もう一度、時間をおいて舞台のことを思い出すことができる・・・なんだかとても貴重で大切なことのように思います。いつも、見たらわわわ~っと高揚して、なんとか感想を書いてそれっきり、ですからね。そして、リタルダンドのようなお芝居こそ、そういう見方(受け止め方)がふさわしいんだなぁ、と。発見でした!!
鋼太郎さん。第2幕の病気が進んでからのたたずまいが、すごくリアルで・・・。もっと病気がすすんでも、洋子にとっては、ちゃんと「洋子」と認識してくれていた事実があれば、それをよりどころにしていけそう・・・。介護している誰にも、そんな「宝物」のような記憶や瞬間が訪れますように。

そうそう、音楽劇と謳ってあっても、最初、突然歌い始めてあらら~、だったところもありました。が、ほんと一路さんの歌、素敵でした。

投稿: きびだんご | 2011.08.15 22:13

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