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2011.08.27

前川知大に刮目

8月26日(金) 「現代能楽集Ⅵ 奇ッ怪 其ノ弐」 19:00~ 於・世田谷パブリックシアター

作・演出/前川知大 出演/仲村トオル、池田成志、小松和重、山内圭哉、内田慈、浜田信也、岩本幸子、金子岳憲

 前回の「奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話」(2009年)はとても評判がよかった記憶があるけど、私は見てない。今回の其ノ弐は「現代能楽集」のシリーズに入って、枠組みは同じながらも題材を能・狂言に求めている。
 ちょうど1週間前、亀治郎の会の時にカフェで偶然会った友人が、翌日はこの「奇ッ怪」に行って高揚したメールをくれたこともあって、私も見てみようと思ったのが正直なところかな。

 役者さんの顔ぶれを見た時に、濃ゆーい感があったのは・・・池田&山内のせいよね(笑)。

 ところが、始まってみると山内さんはむしろ「受け」の立場。こんなの初めて見た。で、仲村&池田がもっぱら熱く(暑く?)引っ張る感じ。

 舞台は・・・数年前に地震による(?)地滑りなどで、硫化水素が発生して、避難所にいた多くの住民が亡くなるという事故があった山間の村。そこの神社に、神主(やはりこの事故で亡くなった)の息子で東京に暮らす矢口(山内)が訪れる。そこにはホームレスの山田(仲村)が住み着いていて、再開発の調査を行う業者の橋本(池田)と地質学者・曽我(小松)も現れる。ほかにも、なんだか怪しい浮浪者がうろついている(黒い衣服に白い面をつけ、不思議な動きをしている。何も喋らない)。それは亡霊?

 この4人の会話から、「こんな人がいたんですよ」と語り始められると、ごく自然に劇中劇になっていく。それはたとえば、事故死した息子の臓器移植に同意したもののそれを後悔し、誰かの身体で生きているはずの息子に会いたいと切に願う母親や、町なかで目撃した暴力事件の被害者に(目が合ったのに)何もできなかったことを激しく悔いて混乱してしまう男、忙しさにかまけて妻の鬱病に気づかず、結果的に病院で自死させてしまったことから、同じ病の人を救いたい(病院不信)と思うあまり最後は偽医者になってしまった男、などなど。

 どれも、とても身近なテーマで、なんだか身につまされるよう。そして、きちんと現実を受けとめ、死を認め悼むことでしか、前に進めない、その受け入れることの大変さも、また迫ってくる。

 そのうち・・・実は開発業者と地質学者も、この世の人ではないことがわかる。そういえば、大災害以前に、駐車場で硫化水素ガスのために亡くなった人がいた、と矢口は思い出す。そして山田も・・・?

 最後は、この村の生活、いや最後の一日。夏祭りの支度をしながら、あれこれ会話が進む。結婚する若者がいて、農地で育てるものを思い描き・・・その日常が突然プッツリ断たれてしまった。そしてそこに残るのは矢口ひとり。

 劇中劇への流れに、違和感がないこと(ふっと劇中劇に入るんだよね)、ありえない設定なのにいやにリアルなこと、そしてそれらすべてをひっくるめて構成的に「やられた~」。というわけで、このお芝居に関してはまず作家・演出家ありき、と思ったのだった。

 全くの偶然ながら、「父と暮せば」「奇ッ怪」ともに、死者との対話であり、理不尽に断たれた生への鎮魂でもある。そんなことを思いながら、空を見たりしている。

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