« 紀尾井ホールでヴァイオリンを聞く | トップページ | 珍しくプレビュー公演を見る »

2012.03.23

そういえば「パーマ屋スミレ」!

3月14日(水) 「パーマ屋スミレ」 14:00~ 於・新国立劇場 小劇場

作・演出/鄭義信 出演/根岸季衣(初美=長女)、南果歩(須美=次女)、星野園美(春美=三女)、松重豊(成勲=須美の夫)、酒向芳(大大吉=現在の大吉、語り手)ほか

 (私にしては珍しく、ずいぶん時間がたったのにあきらめずに感想を書いてる!)鄭さんは作だけで演出は宮田慶子さんと思ってしまってた。

「在日」をめぐるドラマ3作目、三部作完結編である。とはいえ。私は前2作を見ていない(「焼肉ドラゴン」はとても評価が高く、再演され、テレビでも放映されたというのに)。なんかねぇ、ちょっとだけ(ハンパに)接近してた部分がある故に、かえって遠ざかる、という感覚かな。学生時代の先生が「民衆思想史」というジャンルの人で、私も差別意識について考えようとしたことがある。そのとき、悪いことは言わないから「女性差別」などの視点から考えたら、と言われたのは、いまにして思えば当然なんだよね。あまりに物を知らない私であった。

 とまあ、今更な反省はいい加減にして(反省というより追想だな)、南果歩ファンとしては、なんとしても行きますわよ。開演よりも早めに席についておくといい、というアドバイスももらって、1時半ごろ到着。

 そうしたら、開場が少し遅れてます、とのことでロビーでコーヒーを飲みつつ待っていた(マッコリを飲みたかったけど自粛)。そのとき、ふと耳に飛び込んできた声に妙に聞き覚えが! なんと鶴瓶さんが、そんな早くからいらしてお茶をしつつ話してらっしゃいました。顔じゃなくて声(言葉)だけでわかる人、というのもすごいなぁ。

 筑豊の、有明海を見下ろす「アリラン峠」。1965年夏から始まる。この峠で理髪店を営む須美と家族(父親、夫)、姉妹たち・・・それぞれに炭鉱の仕事で生きている。強制連行で連れてこられたり、個別の事情で今は国籍が違ったり(日本、韓国、北朝鮮)、「地上の楽園」への帰還があったり。そういう、今は忘れ去られたような「歴史」がある。

 さらに、ストーリーの核心となるのは、この夏の落盤事故。坑道に閉じ込められて亡くなる人ばかりではなく、救出に行って一酸化炭素中毒になってしまう人もいる。須美の夫がそう。そして春美の夫は、最初から坑内にいたから症状がとても重い。ここで語られるのは、斜陽産業となった炭鉱経営と、組合活動(組合の分裂)。そして「名ばかり」の被害者救済。ありていに言えば、大きな組織の思惑(政府も含む)の中で、切り捨てられて行く人々、ということだろうか。そこで、須美は戦い続けるのである。夫のCO中毒は、どんどん症状がすすんでいく。また、一番最初に、仲むつまじさを見せつけてた春美夫婦を襲う悲劇・・・。

 なーんて、お話を思いつくまま書いてると、なんだかとても暗いみたいだけど、いやいや、けっこう笑えたりするのです。

 不思議なのは、長女・初美の息子大吉。ちょっとおデブないがぐり頭の中学生(かな?)で、それなのに女っぽくてデザイナーになりたい、なんて子。そして、今現在の成長した大吉(役名は大大吉)が、芝居の中に入り込んでまぁ進行役となる。とてもまっとうな人になってるのがおかしい。でも、この大大吉が、ちょこっとユーモラスだったり哀愁があったりして、なんか心に残る。

 こんなふうに懸命に生きていた人たちが、確かにいる。それは、年表を見て、何年の事故で何人が亡くなった、とか、その後の裁判では云々、なんて記録からは決してわからないことなんだな。

 意外と男性陣の存在感が薄かったかも。

|

« 紀尾井ホールでヴァイオリンを聞く | トップページ | 珍しくプレビュー公演を見る »

演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 紀尾井ホールでヴァイオリンを聞く | トップページ | 珍しくプレビュー公演を見る »