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2012.03.19

さて「サド侯爵夫人」

3月12日(月) 「サド侯爵夫人」 18:30~ 於・世田谷パブリックシアター

作/三島由紀夫 演出/野村萬斎 出演/蒼井優(ルネ=サド侯爵夫人)、美波(アンヌ=ルネの妹)、神野三鈴(シミアーヌ男爵夫人)、町田マリー(シャルロット=モントルイユ夫人家政婦)、麻実れい(サン・フォン伯爵夫人)、白石加代子(モントルイユ夫人=ルネの母親)

 三島由紀夫が亡くなったのは1970年。45歳であったのか(と、何回も驚いているような気がするぞ)。「サド侯爵夫人」は1965年に書かれ初演された。つまりは若い晩年の作であり、映画「憂国」の完成は、この作品に先んじている。とまぁ、改めて、書かれた頃のことを思ってしまう。

 それというのも、私自身は、ここに描かれたフランス革命時の混乱を、つい敗戦による価値の転換と重ねてしまったから。だって私自身は「もはや戦後ではない」時に生まれ(え? 十二分に昔でしょうが)、高度経済成長の中を育ってきたんだもん。三島の感じたであろう閉塞感とは無縁ですわ。

 けれども、そんなことを考えること自体、2008年の篠井英介主演、オール男優により演じられた「サド侯爵夫人」よりも、もっと内容に入りこんでいたのかもしれない。去年、同じく男性ばかりで演じられた蜷川演出(コクーン)版は、未見。

 そこに登場はしない「サド侯爵」は、やっぱり萬斎さんの顔をイメージしてしまいますかね~。ラストは悲惨だけども。今回は演出に徹した彼は、「言葉による緊縛」と言い、また自分はS気質とも言ってたと思うけど、さて・・・。思い返せば、たしかに言葉言葉、ではあったのでした。

 とにかく、出演者に白石加代子と麻実れいとあった時に、むむむ、と思い浮かんだイメージは、やはり裏切られず。そう。良くも悪くもね。
 第1幕、全く対照的なサン・フォン夫人(麻実)とシミアーヌ夫人(神野)の掛け合いが楽しい。声の硬軟、露悪と善良(と信じている)。実は神野さんが想像以上に存在感があって素敵だったのでした。ま、白石、麻実と並べば、ある意味そうなるとしても、ね。

 第1幕では硬い感じだったルネ=蒼井優が、2幕の母親との対決のあたりで、がぜん輝き始めたように思えた。第1幕~3幕が、ルネの内面的な成長であるなら、まさにそうだったのでしょう。

 残念だったのは美波。ヘアスタイルとか衣裳が、そもそも合ってないのでは。時流にうまく乗る、したたかな娘ではあるけれど、1幕2幕のヘアスタイルは特にいただけません! 家政婦の町田マリーも、民衆代表みたいなはずなのに、今ひとつ存在感が薄いんだなー。

 ともあれ、休憩が2回も入る長い芝居ながら、飽きたり消耗したりせずに見られたのだから、これからはもう少し三島作品を見てもいいかも、と思ったりもした。

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