« チケット取りが重なる日 | トップページ | 襲名口上に異議あり(東スポ風) »

2012.06.12

渋滞にはまって不思議な旅をする

6月12日(火) 「南部高速道路 La autopista del sur」 19:00~ 於・シアタートラム

原作/フリオ・コルタサル「南部高速道路」 構成・演出/長塚圭史 出演/真木よう子、黒沢あすか。江口のりこ、梅沢昌代、植野葉子、安藤聖、赤堀雅秋、梶原善、加藤啓、小林勝也、菅原永二、裴ジョンミョン、横田栄司

 原作はアルゼンチン生まれの作家・コルタサルの同名の短編小説。パリに向かう高速道路の渋滞に巻き込まれた人たちを描いたこの「幻想小説」をもとに、舞台を日本に移している。
 そう、短編小説の舞台化といえば、野田秀樹「THE BEE」が記憶に新しいけれど、パンフレットではその野田秀樹と長塚圭史が対談している。2人ともイギリスに行ってるしね~。(パンフレットは全ページ袋とじなので、半分しか見えない。「対談部分などの袋とじの中身は観劇後に見て下さい」ですって)

 ところで、私の今日の席は「南A-14」.。東西南北、なんですよ。舞台をぐるりから見下ろすと言いますか(南北の上のほうからだと見下ろす感じでしょう。東西は2列しかない)。舞台は全くの平面で、ただの床、何も置かれたり描かれたりしていない。A列は1列目でその舞台と同じ位置なので、ほんの数十センチ先を役者さんが歩いたりすることになる。

(以下、ネタばれあります)

 何もない舞台へ、客席の通路などから少しずつ役者さんが現われる。それぞれに荷物を持ち、傘を手にして、しかし言葉はない。ぐるぐる歩いたり、整列して止まったり、意表をつく始まり。そして皆、傘を広げてその場に座る。

 カップルがいたりするから、合計10個の傘たち。実はこれ、車なんだ!とわかった時には、あらまっ。この見立てはなるほど、と思いましたわ。傘は様々だけどそれ自体には特に個性はない。バスは運転手(赤堀)が制服を着ていてそれとわかる。あとは普通の乗用車・・・なぜそうわかるかといえば、だんだん、お互いに乗ってる車の名前で呼び合うから。グロリアとかマーチとかミニとか。(原作ではフィアット、ボルボなどで、おしゃれとか小金持ちとか、ちょっと違う意味がつくので、舞台を日本に変えたと長塚さんは言ってる←対談)

 なんだかわけもわからず、高速道路はたいへんな渋滞に巻き込まれている。電話が通じず、ラジオも入らず、情報は途絶。もちろん最初は知らない同士だから、ちょっと会話してもギクシャク。大音量で音楽を流すカップルとトラブルになったり。それでも、水を買い出しにいくとか、協力関係が生まれ、自然発生的にリーダーもできる。またそれに交わらない人もいる。渋滞に巻き込まれた高速道路の一群(彼らの前後にも人々はいる)は、地元の人たちとトラブルになったりもする。

 そうやっているうちに・・・今日が何曜日なのかもわからなくなり・・・暑い暑いと言ってたのにクリスマス、雪だるまの季節が来て、いなくなる人がいて、ここでカップルになった人に赤ちゃんがやどり・・・けれど、突然、車は動き始める。そのスピードが速くて、もう、それぞれを見つけることができない。あんなふうに濃密に関わったのが幻となり、せわしない時間に戻っていく。夢だったとすれば、さめてしまったことがなんだかとても悲しい。そんな2時間。

 ワークショップを経て作り上げられた舞台で、どうも私はそういうタイプの芝居がとても好きらしい。このパブリックシアター/トラムでいえば、「エレファント・バニッシュ」「春琴」「審判/失踪者」など。その物語世界の中に自分がすっと入っていける(自分もある意味、加わっている)のかもしれない。

 役者さんも、それぞれキャラクターが生きているというのか、言葉では表現されない背景の部分が厚みになってるのかな、と思わされた。いや、皆さん素敵でした! 横田さんを近くで見てると、どうも吉田鋼太郎さんとダブってしまうのが不思議だったけど。
 小林勝也はもっともっと見ていたいし、江口のりこの醸し出す不思議な雰囲気も魅力的。真木よう子はさすがに華も迫力もあるんだけど突出してなさ加減がいいのよ・・・と、一人ずつ全員書けそうだよ。

|

« チケット取りが重なる日 | トップページ | 襲名口上に異議あり(東スポ風) »

演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« チケット取りが重なる日 | トップページ | 襲名口上に異議あり(東スポ風) »