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2012.09.25

砂かぶり席で「浮標」を見る

9月24日(月) 「浮標(ぶい)」 18:00~ 於・世田谷パブリックシアター

(葛河思潮社 第二回公演)
作/三好十郎、演出/長塚圭史 出演/田中哲司(久我五郎)、松雪泰子(美緒)、佐藤直子(小母さん)、平岳大(赤井源一郎)、荻野友里(伊佐子)、池谷のぶえ(お貞)、大和田美帆(恵子)、木村了(利男)、長塚圭史(比企正文)、高部あい(京子)、赤堀雅秋(尾崎謙)、深貝大輔(裏天さん)

 これ、去年の1月だったかに吉祥寺シアターで上演された時、すごく感激したんだけど、早くも再演。
 勢い込んで会員先行初日に取ったチケットは、最前列のセンター! けっこう有名な人たちが出演すると思うのに、意外にも「完売」とかじゃないのは、平日18時開演、上演時間4時間のせいでしょうね。苦肉の策か、第2幕から見られるチケットも発売されている。・・・まあ、リピーターにはいいかもしれない。

 ところで、舞台にはもちろん前回と同じく「砂場」が出現。基本的にあらゆる場面はこの砂の上で。ここが五郎・美緒たちが暮らす家であり、近くの浜辺にもなる。で、最前列は喧嘩シーン(五郎と尾崎の)で砂がかかってもおかしくないような近さ(かかりはしないけども)。
 そして、いっちばん最初に、キャストがこの横長の砂場の周囲にぐるりと立って長塚さんが挨拶をした時に、客席の前2列の椅子のことに言及。実は、我々A・B列の椅子はいつものと違って、すっごく低かった! クッションは悪くなく背もたれもついてるものの、足を投げ出さねば、なくらい。こ、これで4時間

 でもまあ、間近で見られる臨場感は、このお芝居では特にプラスだったな、と思う(基本、台詞劇だから)。集中してると椅子のことも気にならなかった。砂の上に置かれた小道具が、ちょっと背を伸ばさないと見えないのがマイナスくらい。

 前回と同じキャストは、田中哲司、長塚圭史、佐藤直子、深貝大輔の4人のみだから、2/3は入れ替わってることになる。逆に言えば、田中、長塚、佐藤がいる、ということが重要なのかもしれない。

 日中戦争の時期(1940年)、千葉の海辺で暮らす画家・五郎と妻。妻は重い結核を患い、五郎は画壇の中でうまく生きられず、意に沿わぬ画の仕事をしつつ献身的に看病している。家には耳の遠い小母さんがこまごま面倒を見てくれる。

 この小母さんと裏天さんが、地元で生きる「学はないかもしれないけど善良な人」。たぶん、自分のことより相手のことを考えるような、無私の人として存在する。いっぽう、美緒の母と妹は、(お金はあるけれど)それぞれに美緒に対して屈折したものがある。
 名目的に(旧民法下)、実家の戸主となっている美緒の財産(土地)を、長男である利夫(美緒の弟)名義にしたい母親。夫にはお金はあるけれども五郎の愛情を一身にうけている姉に嫉妬しているであろう妹・・・このあたり、今回はハッキリ感じ取ることができた。いや、二人とも美緒のことは心配しているし、愛情だってある。しかし、という部分。

 尾崎役の赤堀さんは、やはりうまいなぁと思う。この人も五郎に対して複雑な位置にいる。金貸しで、画を描いてる趣味人で、体制的(?)画壇のメッセンジャーでもある。とても一筋縄ではいかない部分をそのまま、見せつけられたような気がする。

 美緒の命という点での、五郎と主治医・比企(東京在住だけど遅い避暑がてら様子を見に来ている)のやり取りは、この長い物語の中でも圧巻だった。
 そして出征していく、五郎の親友・赤井とその妻、若い利夫と京子(比企の妹)。こちらは別に恋人でもなんでもないが、若い世代として純粋だったり生意気だったりがほほえましい。

 そして美緒。最初、松雪泰子ってどうなのかな、と危惧する気持ちもあったけど、とてもよかった。ほぼ寝椅子に横になったままの「病人」で、台詞だけで伝える力! 対照的に田中哲司の方は、葛藤しもがき、様々に気持ちを伝える。それはもう圧倒されてしまった。

 命の根源を、ほかならぬ「万葉集」で伝えるとき、そこには何の修飾もなくただ生きることを詠っていた・・・。

 大震災があったからこの時期に再演、ということではないらしい。ただ、生きるのがつらい人に、少しでもこの一瞬が届けばいいのに、とは思った。

 東京の後、大阪、兵庫、仙台と巡演して、千秋楽は10月20日の新潟公演。この千秋楽公演は、あちこちの映画館でライブ・ビューイングがあるそうで・・・むむ、行こうかな。 

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コメント

「浮標」のチラシをどこかの劇場でもらって、あらこれもう再演なの、と私も思ったのでした。相当長い芝居だけれどその長さを感じさせなかったときびだんご様が感想を書いておられたのを記憶していて、ちょっと関心が湧いたのですが、今年はなるべく歌舞伎に集中しようと決めていたのと、やはり長さにためらいを感じて今回もパス。
こちらであらためて観劇気分を味わいました。
田中哲司さんは、以前、何かのTV番組の「よく見るけど名前がわからない俳優さん」というコーナーで佐藤二朗さんなんかとともにリストアップされていました。テレビで見てもいい役者さんだなあと思います。

投稿: SwingingFujisan | 2012.09.27 11:22

SwingingFujisanさま
どうしても、この上演時間の長さはネックになりますよねぇ・・・。会社の若者(長塚好き)も、仕事の忙しさにもってきて、4時間ということで断念したそうです。しか~し、にわか「浮標」宣伝隊員になりたいくらいの私です。

そう、SwingingFujisanさまが歌舞伎に集中、とおっしゃるのはわかります。私も気の向くまま、ではありながらも、やはりおのずと優先順位はつけてますもの。その結果、ちょっと歌舞伎が減っている昨今。菊ちゃ~~ん

テレビドラマを滅多に見ないので、田中哲司がどんな役をやってるのか興味あります。・・・と言いつつ、有起哉くんの「トッカン」だって、結局、ほぼ見逃しちゃったくらいだから、なかなか・・・。

投稿: きびだんご | 2012.09.27 23:36

きびだんごさま
初演をご覧になったきびだんごさまが改めて観ても「よい」
とおっしゃる『浮標』。
静寂の中に台詞の砲火が飛び交うような舞台でしたが、
本当に言葉の力ってすごい、と感じた作品でした。
何だか登場人物それぞれに、美緒のお母さんでさえも、
愛おしく感じちゃって・・・。

終始熱いタナテツさんと対照的に静のお芝居が冴え渡る
松雪泰子さん、すばらしかったですね。

今日は池谷のぶえさんと村岡希美さんの朗読劇ですね。
いいなぁ~。楽しんでいらっしゃいませ♪

投稿: スキップ | 2012.10.25 08:23

スキップさま
スキップさまが大阪でご覧になったおかげで、またあの感動が甦って、それだけでウルウルしそうな私です。
松雪泰子さんは、何度か舞台でも拝見してるんですが、今回が一番よかったです。というかずっと美緒として記憶に残ると思います。初演時の美緒=藤谷美紀さんは、はかなさ可愛らしさがまずあったのですが、松雪さんにはほんと「女」の部分を感じましたねぇ。またそういう「人生」を感じさせるから、保育所で面倒を見た子供たちの声がより強く迫ってきたのだと思います。(ぐすんぐすん)

リーディング、六本木の地下秘密クラブみたいな場所だったんですが、白ワインをいただきつつ楽しんできました。ニュートラルな雰囲気(?)のお二人よかったです。

投稿: きびだんご | 2012.10.25 22:18

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