« 「よいやよいや」vol.31 | トップページ | 近くからも見たくなる「二人椀久」 »

2013.03.08

対話から思う「今」

3月6日(水) 「ホロヴィッツとの対話」 19:00~ 於・パルコ劇場

作・演出/三谷幸喜 出演/渡辺謙、段田安則、和久井映見、高泉淳子

 どういう幸運かあっけなく取れたチケットで、席はZ列センター。3列目ね。こういうところでチケット運を使うのもどうかと思うけど。

 さて、例の如く、あまり情報を頭に入れずに劇場に行った。知ってたのは、渡辺謙さんが調律師の役というのと、和久井さん初舞台ということくらいかな。最初はわかってたはずの段田さんも、そうそうホロヴィッツよね、とほぼ失念。

 「神に選ばれた」天才、ホロヴィッツ。私はかろうじてテレビ映像を記憶している。亡くなった時だったのかしらん。正直、小柄なおじいちゃん(気むずかしいの?)で、そ、それはミスタッチですか、なんて思ったのは、「ひびわれた骨董品」とかいう評の先入観か。

 それはともかく、偉大なピアニストと彼に見込まれた調律師、2組の夫婦のある一夜のお話。 

 舞台のホロヴィッツの年は70いくつ。段田さんが歩き方をはじめ、ほんと老人に徹してる(カーテンコールで出てくるときも!)。その妻ワンダ・高泉さん。舞台で見るのは久しぶりだけど、うまい人だなぁと、つくづく。

 この超有名な夫婦が、ある日、調律師フランツの家に夕食を食べにくることになったから、さあ大変。それも招いたわけじゃなくて、所望されたのだ。
 こちらは、ごく普通の、思春期の男の子を筆頭に3人の子供がいる。ディナーの準備をする間にも、息子が学校でトラブルを起こしたらしい、とか、一番下の娘は中耳炎で寝ている、とか、バタバタしている気配。

 わがままなピアニストに翻弄されまくり、「自分のセンスや子供の教育法は絶対に正しい」とするワンダには、いちいち口を出され・・・調律師の妻・エリザベスが気の毒になりつつも笑っちゃうシーンが多々。

 だけれども、ある一瞬からその空気は一変。緊張をはらむ。ピアニストの妻がさんざん自慢していた娘は、実はその重荷ゆえにすでにこの世にいないこと、そして子供をなくしたことのない人には気持ちはわからないという彼女に、フランツが少年の時の空襲体験を語る。そこで弟を亡くし、戦争に行っていた兄も亡くなったこと・・・。
 そういえばドレスデンで、空襲のすさまじさを今に伝えるモニュメントを見たっけ。

 と、こう書きながら・・・ホロヴィッツ(芸術家)の葛藤、天才性などじゃなくて、そういう背景を通して、きわめて現代的なことが語られたんでは、と思っている。親はどうあるべきか、であったり、大事な人をなくす痛みであったり。じゃあ、ホロヴィッツである必然性は? エピソードにいろどられた「神に選ばれた人」は他にもいるのでは、なーんて。

 作品そのものについては、ちょっと軽さに流れてるのかも、と思ったりもする。どうだろう。俳優さんはみんな素晴らしかった! 段田&高泉の老獪さ(あえてこの言葉で)、謙さんの感情過多にならない台詞術、和久井さんのいい意味での生活感。彼女のホンワカした雰囲気で舞台が明るくなったと思うな。

 というわけで、三谷さんの「海外芸術家シリーズ」というのがあるとすれば、いまだに1位は「コンフィダント・絆」だというのを認識したのでした。

*大震災からちょうど2年のこの時期、テレビ・新聞などでも特集が組まれてるから・・・渡辺謙・フランツが語る空襲の惨状(数日後、家のあった場所に行き、弟やその他の人々を発見する)が、そのまま津波後の映像に重なる。芝居を作る人も見る人も、決してあの日の前には戻れない。
*追記。といっても、日本にも大空襲はあったわけですが。

|

« 「よいやよいや」vol.31 | トップページ | 近くからも見たくなる「二人椀久」 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

レポ、ありがとうございます。
歌舞伎のこともあって泣く泣くあきらめた公演ですので、嬉しく拝読しました。
高泉さんはテレビ(ポンキッキ)でしか見たことなくて、その後、テレビでは見かけなくなって、名前から高畑淳子さんとごっちゃになって…全然違う人物だっていうのはわかってるんだけど、しばらくの間混乱しましたっけ 上手な役者さんだというのはポンキッキからでも想像できました。
きびだんご様のレポでかなり満足したけれど、やはり実際に見たかったなあ(クラシックファンの息子も連れて)。あっさり当選しちゃったきびだんご様が羨ましい。
 

投稿: SwingingFujisan | 2013.03.16 14:39

SwingingFujisanさま
こんばんは。いま岡山ですが、今日は新幹線から富士山がよく見えました。もうけっこう山肌が見えてて春だなぁ、と。
ホロヴィッツ、運がよかったというか、実はTwitter先行みたいなので、抽選でもなく先着で取れたんです。

高泉さんと高畑さん、ほんと私もわからなくなってしまってました。しかも淳子って、私としては「じゅんこ」なのに、ふたりとも「あつこ」なんですよね(ちょっと自信ない)。
で、ホロヴィッツ……ちょうど、平幹二朗のフルトヴェングラーにガツンとやられて間がなかったから、あちらほど「聴きたい」気持ちにならなかったんです。でも実は音楽への気分が高まって、壊れたあとナシですませてたミニコンポを買ったのでした。影響されやすい女!!

投稿: きびだんご | 2013.03.16 22:06

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 「よいやよいや」vol.31 | トップページ | 近くからも見たくなる「二人椀久」 »