« バルト三国ってどこでしょう? | トップページ | もう一人の父 »

2013.03.14

「知識人階級」という言葉

3月13日(水) 「長い墓標の列」 14:00~ 於・新国立劇場 小劇場

作/福田善之 演出/宮田慶子 出演/村田雄浩(山名)、那須佐代子(久子:妻)、熊坂理恵子(弘子:娘)、古河耕史(城崎:助教授)、遠山悠介(花里:弟子)ほか

 この日は、ほんらいなら2度目の演舞場・昼の部(3階B)の予定だったんだけど、人に譲って新国立劇場へ。新国立劇場の演劇研修所修了生が大勢出演している。その分、まず「役者でひきつける」ような芝居ではない。加えてタイトルといい、内容といい(戦争に傾斜していく時代のアカデミズムの世界)・・・ちょっと二の足かも。

 でも、私ってこういうのが好きなんだな、と実感する日となった。休憩込みで3時間10分。2時間弱でもな時はよくあるのに、初めから終わりまで、興味津々と言いますか、わわわと思ってるうちに幕となった感がある。でも、まあちょっと冷めた目で見てたかも。

 時は昭和13年~19年。主人公・山名のモデルは、河合栄治郎で、彼の「大学における自治」を守る闘いと敗北、大学人、弟子たちの立ち回りと、それにも深く関わる娘の恋・・・。

 いつの時代にも、学問上の業績に加えて、その立場で「象牙の塔」をうまく泳ぎ、生き抜く才能も必要なのかもしれないなー、なんて思ってみたり。ま、現代はそれが確かに要求されてる気がするけど(偏見?)。
 戦前においては、学問はまさに「知識人階級」のものであり、その成果を国民に知らしめすものだったんだろうな。

 というのも、「知識人階級」という言葉が何度か出てきたものだから。ちょっと、「うわっ」な気分。「文化人」とはまたニュアンスが違うよね。

 舞台での「場所」は、大学の経済学部研究室と、山名の家(茶の間&書斎)。椅子や机の配置を変えるくらいで、研究室から山名家へ。山名家は、部屋は複数あるけれども、壁などの仕切りはなくて、そこは見る人の想像力に任されるらしい。
 山名家の玄関に向かう坂道が窓の向こうに見えていて、「やってくる人」「去っていく人」「駆け出す人」・・・印象深い。
 が、やっぱりこの家の作りが、ちょっとな、とも。

 家庭における妻や子供たちと、山名との関係も、多くは語られず。まあ昔は「夫に従う」「内助の功」が求められ、それが自然だったということかしら。

 面白いと感じたところは、娘・弘子が結婚を約束していた花里(山名を裏切り復職することを決める)を追っていった場面。それは、回想として弘子の口から語られるのみなんだけど、聞きながら、その場面がくっきりと目に浮かぶようだった。その時、ほとんど追いついたのに、彼女の目にうつる花里の後ろ姿(だか横顔だか)には、自由の空気があったんだよね。だからもう追えなかった、と。
 そして、「自分が死んだら届けてほしい」と城崎に託して戦死した花里の日記を、もはや読むことすら拒否するのだった。

 時代の空気、大学の状況といったものは、伝わってきたんだけど、学問以外に対する山名の人間像には、共感できない感じ、なのかなぁ。

 全く「いま」と関係のない芝居で、原発のことや津波を思い浮かべたりすることがある。
 が、このお芝居では、戦争へ至る社会状況や、「人間の生み出したものがもはや人間の手に負えなくなってる」といったような台詞があるにもかかわらず、私自身はまったく「あの時代」への興味に終始した気がする。

*前に「3作品通しチケット」を買ったときに、このお芝居の10パーセント割引クーポンをもらっていて、それと「あぜくら」割引が併用できたので(エライ!)、わりと安く見られた。もっとも得チケの類もあれこれ。

|

« バルト三国ってどこでしょう? | トップページ | もう一人の父 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

私は「革新」とか「急進派」とかの言葉が、感覚的に受け入れにくくて、そのせいで余計に前半はぼけっとしちゃった気がしています。
保守に対しての革新だから、単純に新旧の意味だと、アタマでは理解できても、どうしても革新は左って刷り込まれてるんですよね。
右派を革新と呼ぶ場合もあるんだ…と、なんだかとってもへんな気分でした。
ヒトの呼べる俳優が出ていないわりには、よく入ってた気がするんですが、やっぱり「その筋」のオジサンたちが多かったんでしょうか?

投稿: 猫並 | 2013.03.15 22:20

猫並さま
あ、そうですね。革新派! とうぜん河合、じゃなかった山名がそうだと思っていたら、ちがってて。そこでまず「一旦停止」みたいな気分になったんでした。
山名と、弟子たち、学部長、革新派教授、それぞれの言葉のやりとりはとても面白かったんですが、家庭に目を転じるとどうもねぇ。娘の心理も、ポーンと投げ出された感じ。そっちが主眼ではないとはいえ。

ほんと、意外にもかなり席は埋まってましたよね。河合栄治郎研究会ってのがあるようですから、そこのメンバーはもちろん見に行くのでしょうか・・・、

投稿: きびだんご | 2013.03.15 23:26

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« バルト三国ってどこでしょう? | トップページ | もう一人の父 »