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2015.10.26

渋沢敬三と宮本常一、でも演劇の話

10月24日(土) 「地を渡る舟 1945/アチック・ミューゼアムと記述者たち」 14:00〜 於・東京芸術劇場シアターイースト

(てがみ座 第11回公演)
脚本/長田育恵 演出/扇田拓也 出演/清水伸(宮本常一)、俵木藤汰(渋沢敬三)、三津谷亮(吉永修司)、松本紀保(渋沢誉子)、福田温子(宮本真木)ほか

茨木のり子を描いた「蜜柑とユーウツ」の作者、長田さんの作品、しかも民俗学ですって⁉︎ということで、ホイホイと。初演ではなくて2年ぶりの再演とのこと。

サブタイトルに1945が入ってることに後から気づいた。冒頭、1945年の終戦直前、渋沢邸に「宮本さん」が現れて、女中の「りく」と言葉を交わすところから始まる。そしてすぐに、1935年に。そこから時をたどっていって、なるほど!冒頭のシーンはここだったのか、ということに。

アチック・ミューゼアムとは、渋沢敬三(渋沢栄一の孫。父親が廃嫡されて若くして当主となっていた、というのは、作中でそれほど具体的に説明されない)が、私財を投じて設立した民俗学の研究所。のちに、これは敵性語であるとイチャモンをつけられ、「常民文化研究所」となった。渋沢邸の離れにあって、若い研究者が出入りしている。そこには日本全国から収集した生活用品、祭祀のための物などが溢れている。そして、奥様(三菱・岩崎家出身)はとうぜん、こころよくは思っていない。

ここに集う人がユニークかつエネルギッシュ。学究肌の人も、学生も、絵描きもいる。そこへ、大阪で教員をしていた宮本常一が呼び寄せられる。彼は苦労して得た職を捨て、妻子を大阪に残して上京する。そしてほんとに、日本中を歩いて歩いて、土地の人から話を聞いて回る。

その行動は、軍部から「スパイ」と疑われ、じっさい危ないことにもなったりする。
研究所の人たちも、いつ召集令状が来るか、という状況だし、女中頭の弟は戦地に行き、やがて戦死の知らせが。最初はのんきにテニスをしていたお屋敷の庭も、畑になったり。2幕になって、この戦況が悪化してくる頃が、一番、緊張感も高まった。
人物像が画一的じゃないところが、魅力的だと思う。たとえば、渋沢の妻は夫をそもそも理解できないけれど、彼女なりに考えが一貫していて、宮本の妻への言葉にも納得できるものが。決して嫌な女になってないの。

ラストシーンも秀逸で、戦後、渋沢が宮本にくっついて旅に出て、そのとき広場は戦争直後の姿なんだけど、人が行き交ううちに、あら?携帯を持ってたり旅行カートを引いてたり。「地を渡る舟」のタイトルにも納得。

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コメント

数か月ぶりにお邪魔し、思わず「宮本常一」に反応してしまいました。あ、この芝居を観たという訳ではないのですが。取りあえず無沙汰のお詫び(?)と挨拶代わりでした。

投稿: 丙申の松乃鮨 | 2015.12.10 21:13

丙申の松乃鮨さま
お久しぶりです。私としては、「丙申」でおびき出そう(爆)としたんですが、さすが、こっちでしたか
最近はもっぱら能楽堂にお出ましでしょうか。先日、「神遊」最終公演の案内も来ましたが、なかなか行けません。来年、国立の公演に少しは行けるといいのですが。

投稿: きびだんご | 2015.12.10 21:31

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