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2015.12.13

「きちんと見送る」を考えた

12月11日(金)  「消失」19:00〜  於・本多劇場

ナイロン100℃  43rd  SESSION
作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ   出演/大倉孝二(チャズ)、みのすけ(スタンリー)、三宅弘城(ドーネン)、八嶋智人(ジャック)、松永玲子(エミリア・ネハムキン)、犬山イヌコ(ホワイト・スワンレイク)

  2004年にこのメンバーで初演。ディストピア譚、と書いてある……。私は今回、初めて見る。
  幕開きはタイムリーにも、クリスマスツリーの飾り付け風景。長身の兄(大倉)と、チビっちゃい弟(みのすけ)。パーティ料理の準備やプレゼント(手編みのセーター)も用意してある。(後に、彼らは兄47、8と弟41、2←忘れた、と言うんだけど、この時点では年齢不明。)
  弟が探し出したアルバムには、両親と兄しか写ってない。なんで?   とまあ、これがプロローグ。
 

  小さい頃に両親が離婚して出て行き、二人で暮らしてきた彼らにおいて、兄はぜったいの保護者。なんでもお兄ちゃんの言う通り。パーティに招待した片思いの彼女、スワンレイクさんへの手編みのセーターだって、お兄ちゃんが編んだものなんだよ。
でも、腕をふるった料理も彼女の浅蜊アレルギーでとんでもないことになり(これは暗転の間の出来事として語られるだけ)、そんな、がっかりパーティの後、彼らの家を次々、人が訪ねてくる。スワンレイクは最初、抗議に来たんだっけな。

   ドーネンというもぐりの医者は特に怪しい。彼の登場で、スタンがちゃんとした「人間」じゃないらしいな、と。ドーネンは現れた時からよくつまずいたりしてて、物語の進行(=ほんの数日)の間に、なぜか一気に老化している。あちこち痛み、物の名前が思い出せず……。
  借り手を募集したままになってた2階の部屋を借りにきたエミリア。戦争があったどさくさで、貸そうとしたことすら忘れてた。彼女、実は結婚してたんだけど、政府がすすめた「第二の月」への移住計画の失敗で置き去りにされたそう。これももちろん後からわかること。

  もう一人、ジャックは故障したガスの修理に来た……んだけど、素振りが変だ。変といえば、彼らだけじゃなくてとりまく世界もいちいち不気味。面白い話題があったとしても、舞台全体はグレーでどんよりしている。結末も救いようがない。確かにSFなディストピア。

最終的に、スタンは幼い頃、家族で行った展望台で、兄がつまずいてぶつかり落下したことで死んだのだとわかる。今の彼はロボットで、記憶も、残したくない出来事だと兄が思えば消去できる、そんな存在。だからこそ、兄がぜったいの保護者だったんだ。
先に見た「ツインズ」もそうだったけど、「受け入れられない」死と、どう折り合いをつけるのか。何かしら空想の産物でも作り上げなければ、残された人が生きていけないようでもある。現実に立ち向かって自分が傷つくか、空想の中に逃避するか、みたいな。

  初演時期を考えると、2001年の同時多発テロが与えた衝撃から、というのは想像に難くない。そこから10年以上が過ぎて、さらにこの世界は……。

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コメント

今年最後に、「消失」と「ツインズ」のダブルヘッダーという強行軍を実行しました。

いつものことですが、あまり予備知識なく見たのですが、2本とも、切実さが迫ってきました。
想像を超える出来事を想像し続けないと彼方に消えてしまうから、改めて自分の感覚を呼び覚ましてもらったような気がします。
文学、小説を読むという行為より、直接に感じるのだなと思いました。

1年間、お疲れ様でした。
来年もお体を大事にしつつ、どうぞお元気で活動されますように。

投稿: ポンジュース | 2015.12.31 15:26

ポンジュースさま
こちらにもありがとうございます。
いやー、今年の観劇の〆が「消失」「ツインズ」のダブルヘッダーだなんて、すごい。そうとう消耗しそうですが……。
でも、ほんとに両方を見るからこそ、プラスアルファで感じられることがあったなぁ、と思います。その時期に上演が重なってることも、それを選んで見に行くことも、偶然といえば偶然だけど、自分にとっては必然、そう思いつつ。

お互いに来年も元気に、よく働きよく遊びましょう

投稿: きびだんご | 2015.12.31 22:53

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