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2015.12.11

海に消えた人にいつか会いたい

12月9日(水)  「ツインズ」  14:00〜   於・パルコ劇場

作・演出/長塚圭史   出演/古田新太(ハルキ)、多部未華子(イラ)、りょう(ローラ)、石橋けい(ユキ)、葉山奨之(タクト)、中山祐一朗(トム)、吉田鋼太郎(リュウゾウ)   音楽/荻野清子

  時代はいつか、場所はどこか、よくわからない。ただ、数ヶ月前に何か大災害が起きたらしい、海辺の家。始まりのピアノ曲と、その曲をあたかも鍵盤がある如く一人客席に向かって立ち、弾いている多部未華子(役名イラ)。そのメロディや何もかもから、不気味な幕開きを予感する。
  そして、この海辺の家のリビングダイニングの朝が始まる。

  人が集まっていくうちに、だんだんおおよその人間関係がわかってくる。もともとこの家に住んでいる長男のリュウゾウは独身で、老いて寝たきりの父親(登場せず)がおり、ローラは看護師?お世話係??   遠縁とかいうトムといい仲のよう。この家の長女エリコは海に消えて、でも息子のタクトは町へ帰ってるに違いないと言い張る。彼の年上の妻ユキは双子を生んだのだが、ほとんど泣かずおとなしい。
  そこへやってきたのが次男のハルキとその娘イラ。彼らが到着した翌朝から、舞台は始まる。

いろんなことが不穏。海で獲れる魚などを食べるなんてとんでもない、というハルキたち。もちろん水はペットボトル。タクトもそうなんだけど、でもユキは普通に水道の水からミルクを作っている。トムたちは、魚を忌避するなんて考えもしない。そしてリュウゾウは、なぜかいつも(朝から)ブルーのカクテル?を飲む。彼は飲むのは常にこれ。コバルト色した「海の水」なのだ。

ハルキが帰ってきたのは、父親(からということで)呼び出されたからだけど、彼はイラを船でオーストラリアにやりたいと思っている。安全な場所へ。そのためのお金をなんとかしたいのである。いま、小さな船だって、とても難しい……というあたりでは、当然、シリア難民の姿を思い浮かべる。
 

  海に出ること(トムもローラも泳ぎが得意。特にローラは「まるで人魚」)に躊躇しない人と、海を恐れている人。恐れ方もそれぞれに見える。
  最初は、父親の言うことをよく聞く、おとなしい娘だったイラだけれど、いやいや、そんなことはないんですねー、うわっ、というあれこれ。暴力的でもあった父親のハルキは、途中から、妙にお祭り好きなおじさんになっちゃうし。
  帰ってこないエリコ(ローラやトム、リュウゾウには彼女の「海での居場所」について確信がある)に続いて、エリコの孫にあたる双子も行方不明に。赤ちゃんだよ。なぜ?どこへ?

とまあ、こうしてストーリーを追っても殆ど意味はないのかも。ただただ、目の前の情景が、ほんの4年ほど前のことを思い起こさせる。
そして、シュールなストーリーではあるけれど、海に消えた人たちへの鎮魂の思いは、強く感じた。いつか違う姿で帰ってきてくれるかもしれない。海に漂うその人の細胞の一つ一つまでも「その人」であることがわかるなら……。

なにか教訓めいたものや告発的なことがあるわけではもちろんない。ただただ、目の前のことを見て、感じて、考えていけばいいのだと思う。最後の不思議なシーンが、希望であってほしい。

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