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2016.07.09

ちょうど1年前に広島に行った

7月8日(金) 「紙屋町さくらホテル」 13:00〜 於・紀伊國屋サザンシアター

(こまつ座 第114回公演)
作/井上ひさし 演出/鵜山仁 出演/七瀬なつみ(神宮淳子)、高橋和也(丸山定夫)、相島一之(大島輝彦)、石橋徹郎(針生武夫、立川三貴(長谷川清)、神崎亜子(浦沢玲子)、松角洋平(戸倉八郎)、松岡依都美(園井恵子)、伊勢佳世(熊田正子)

この日は、前々からシアターコクーン「ゴーゴーボーイズ ゴーゴーヘブン」を予定していた。それなのに、ずいぶん安く見に行けることになって、急遽これも入れてしまった。全く! 来週なら余裕あったのになぁ、マチソワだなんて。
しかも、蓋を開けてみれば、どちらも3時間超。うーー。

さて、こまつ座のこのお芝居は、10年ぶりの上演だという。私は初見。いつもながら、客席の年齢層がとっても高いです。

ストーリーは全く知らないながら、さくら隊のことは少し耳に入ってた。メインの「とき」は1945年5月の広島だけど、冒頭は同年暮れの東京、巣鴨プリズンにやって来た長谷川(自分はA級戦犯だから収監せよ)と迎える針生(帰りなさい)から。この2人は、さくら隊の臨時メンバーとして会っていたのだった。

内容ははっきり言っててんこ盛り。戦争末期の演劇関係者、日系アメリカ人・神宮淳子の立場(及びアメリカで強制収容所に入れられた彼女の父や兄)、軍や特高警察の動き……。と書いていくと、それだけでどんよりしそうだけど、そこは井上ひさしですから、歌も笑いもいっぱい。

休憩の前、第1部は少しまどろっこしいというか、説明調が気になるところもあった。だけれども、第2部、みんな(別々に身分を偽っていた長谷川、針生や、淳子を24時間監視するためについている特高刑事の戸倉も)さくら隊として「無法松の一生」を稽古する、その稽古が佳境に入る中で、場面は緊張。
自分の大事なひとを思い浮かべる時、方言研究に来ていた大島がなぜこの広島にいるのか、明らかになる。彼が読む、教え子の手帳(遺書)に涙が止まらない。

でも笑ってるから泣ける、って部分もきっとあるね。丸山と園田が、素人に演技指導をするんだけど、演じてるのはプロの俳優だもんね。下手さ大げさ加減もおかしくて。歌や踊りにも気分が変わる。


俳優さんはどの人もよかった。まぁ、そもそも石橋徹郎ファン、というのを抜きにしても、彼の演じる針生(林と名乗る傷痍軍人として広島にいた)は、その戦後の姿までも、不気味。……というか、結局、こういう元軍人が、戦後をうまく生きていったんだろうな、と思わせる。
七瀬なつみの、特に声の透明感を強く感じ、イトコ役の伊勢佳世はたくましく元気な広島弁で、どちらも舞台に明るさをもたらしてた。相島一之は言わずもがなで。
誰か突出して目立つわけでもなく、でもそれぞれが素晴らしい、というのが、井上ひさしの作品なんだろうか。

そして、最終的に天皇制に言及するわけだけれど(長谷川は天皇の密使として、本土決戦への備えの状況を見て歩いていた)、はっきり言わねばならぬという意志もまた、感じたのだった。いつもだと、うわっ、だから井上ひさしだよ、なーんてナナメに見ちゃうんだけど、ナナメ見てる場合じゃない現実がある。

去年、思い立って広島に行ったのは、本当に良かったと思う。バスで通った紙屋町も、この作品のタイトルを知っていたがゆえに、「ここが」という実感があった。あえて紙屋町と付けられている意味を、少し考えている。

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コメント

紙屋町交差点はバスセンターがあり、市電の路線分岐もあるので、市内で最も多く利用されるエリア。昔は有人の交通司令塔がありました。

でも、紙屋町の由来は地元の人もあまり知らないと思います。昔はあのあたりは革屋町(これしか覚えてないけど)など別の町名がたくさんあったんです。

投稿: kazzp | 2016.07.10 21:04

kazzpさま
紙屋町、すごく大きな通りを通ってるなー、とバスの中から思ってたんですよ。広島の市電にも乗ってみたいです。岡山からだと、なかなか広島・山口って行きづらかったので(気分的にかな。つい神戸とか行っちゃう、 みたいな)。
去年、たまたま広島に行ってたから、オバマ訪問などもちょっと実感が持てました。

投稿: きびだんご | 2016.07.10 23:03

こんばんは。またまたご無沙汰しております。
きびだんご様が初見とは意外でした。私は辻萬長さんの長谷川清で2回見ているので、今回はパスしてしまいました。10年ぶりの上演? そんなに前だったのかしら、と調べてみたら、2006年、2007年。つい最近のようなような気がするくらい、強烈な記憶を残した芝居でした。私も遺書の場面ではボロボロ泣きました(声をあげて泣きそうで、タオルで必死で押さえていた)。大島教授は久保酎吉さんでしたが、演技でなく久保さん自身が読めなくなったのではと思うほどでした。
お芝居の場である紙屋町を通られたことで格別な実感を持たれた…わかるような気がします。私ときたら、あんなに感動したのに、未だに「さくら町紙屋ホテルだったっけ?」とわからなくなってしまうありさま。でも、このレポ拝見したからもう間違えません。
パスせずに見ればよかったかな。

投稿: SwingingFujisan | 2016.07.13 20:10

SwingingFujisanさま
こんばんは。実のところ、こまつ座はそんなに見てないんですよ。近年はそれでも見てる方、ってくらい。……ナナメ視人間なので、素直に見て来なかったんです。
再演以降になると、もういいかな、というのはありますね。私の場合は、萬斎マクベスなんかがそうかしら。見ようかどうしようかと迷いますよね。
久保酎吉さんの大島教授も、見てみたかったな。親に宛てた遺書だけじゃなくて、学問の半ばにして散った学生の気持ち、教師の悔恨がつらかったです。
ちょうどサラメシ・あの人が愛した昼メシが井上さんでした(奥様の井上ユリさん登場)。そういえば米原万里さんが亡くなられて10年。

投稿: きびだんご | 2016.07.14 00:28

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