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2017.04.15

チェーホフに親近感

4月12日(水) 「わが兄の弟 贋作アントン・チェーホフ傳」13::30〜 於・紀伊國屋ホール

(劇団青年座 第226回公演)
作/マキノノゾミ 演出/宮田慶子 出演/安藤瞳(ニーナ)、横堀悦夫(アントン・チェーホフ)、大塚仁志(ニコライ=次兄/ポポフ)、石母田史朗(アレクサンドル=長兄)、山本龍二(パーヴェル=父)ほか

今週は書の作品書きの追い込みで、予定をあけていたんだけど、なんとか大丈夫そうなので(少し安く見られることだし)、思い切って行って来た。久しぶりの紀伊國屋ホールは、我が家からは行くのも便利だし、終演後にあれこれ本を見るのも楽しいし。
豊洲の劇場に行ったばかりの目から見るとこちらはいかにも古いけれども、ロビーなどの空間がそこそこゆったりしているのはほんと有難い。

さて、お芝居である。劇団青年座の公演って、初めて見るのかなぁ。出演者でかろうじてわかるのは、山本龍二、石母田史朗くらい。題材がチェーホフ、というのと、作・演出のコンビに惹かれて見ることにした。

サブタイトルに「贋作」とあるように、チェーホフの評伝なのではない。が、その年譜や彼が残した膨大な手紙をもとに、イマジネーションを膨らませたもののよう。いやー、戯曲がとても良くできてると思う。目当ての役者がいるわけでもないし、新作だと、ホンがいいことは必須よね。

第1幕・1880年1月。モスクワの安ホテルの一室
第2幕・1883年8月。モスクワのチェーホフ家
……休憩……
第3幕・1888年6月。ハリコフ県の郊外の古い家
第4幕・1890年10月。南サハリンの監視所内の診療所

アントン・チェーホフは1860年生まれ。第1幕の彼は、モスクワ大学で学ぶ医学生であり、すでに文筆家としてデビューしている(三男なのに、兄たちが家を出たために彼の稼ぎと奨学金で暮らしている)。まずは軽いドタバタ調で、ニーナとの出会いが描かれる。

第2幕は主としてチェーホフの一家の家族事情。父親に絶対に認められない恋をして家を出た長兄と、やはり家を出ている呑んだくれの芸術家の次兄(他に妹と弟)。全員が集まったある夜のゴタゴタをユーモラスに。ここでもチェーホフの「お金を稼ぐために書く」姿が←悲壮じゃない。次兄からニーナの身に起きたことを知らされる。

第3幕は一転、(作家としてある程度名が売れていて)バカンスで三人姉妹の暮らす名家の離れに。妹と、妻を亡くした長兄もやって来ている。ここの長閑な光景と次幕のコントラストよ! 三姉妹のうち長女はやはり医者だけれど、余命いくばくもない(思索の人)。同じく医者の次女(常に悲しげ)、天真爛漫な三女。

4幕。チェーホフの初めての相手・ニーナ(次兄の恋人だった時もある)は没落貴族の末娘で、反体制運動家の姉を法廷で侮辱した検事を射殺してシベリア送りとなっていた。彼はそこで流刑囚の調査のため(という名目で)出かけて行き、念願のニーナとの再会を果たす。けれど彼女は、生きてここまでたどり着いた代償に足を1本と、手指の何本かを失い、さらに自分はニーナではなく姉なのだと信じていた。「私はニーナ、いいえそうじゃない!」

30歳までのチェーホフの前半生(でも44歳で没)を、彼の有名作の世界を援用しつつ笑いもちりばめて描いていて、2時間余、ぐいぐい。たとえば「かもめ」ならトレープレフや、お金のないメドヴェジェンコなどをふいっと思い浮かべたり。
劇団だけあって、台詞はうまいなぁ。ただし、この日は主役・横堀さんが若干不調だったもよう。

500円で買ったパンフレットに「ロシアのこと『あれこれ』」のページがあって、これがまたよくできてる! 名前につく愛称(ニコライ→コーリャとか)、サハリン島についてなど、もっといろいろ知りたくなる。

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